グローバルで通用する人材の条件 キャメル・ヤマモト デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター

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左手を使い、真のリーダーシップ&コミュニケーション力を鍛える

グローバルで通用する人材とは、大ざっぱに言うと「構想」「構造」「行動」でリーダーシップを発揮できる人である。何年後にこうするという結果イメージやビジョンをはっきり語れて、そのためのプロセスを構想できる。自分の課や部のメンバーだけではなく、外部からも適任者を集めて、組織の構造を作れる。外国人を含めたバックグラウンドが自分と異なる人も動かすことができ、目標に向かって行動できる。そういう人材が、グローバルでは求められる。

逆に、たとえ英語が堪能であっても、日本人の多くに見られる調和型の人材は、グローバルではあまり価値を認められない。よく「グローバル人材に求められるのはコミュニケーション力」と言われるが、これは言葉の問題というより、どんな人とでも仕事を進め、率いることができるリーダーシップが問われているのである。

では、どうしたらそのようなグローバル人材になれるのだろうか。グローバルリーダーを育成するのに、役員や幹部候補に数千万円を投じて欧米の大学院の研修プログラムを受けさせている企業もあるそうだが、もしその研修プログラムにおいて日本人が多数を占めているのであれば、うまくいかないだろう。やるなら、世界における日本の人口比率にまで日本人の比率を落とした、外国人中心のプログラムというような、これまでとは異なる環境に身を置かなくてはならない。

ここで1つ提案したいのは、「これまでとは異なる環境に身を置く」ことは、実は海外に行かずとも、国内においても可能だという点である。私はこのことを「左手でやる」と表現しているが、国内にいながらにしてグローバル人材になるためのトレーニングをすることは可能なのだ。この方法だと、理想的ではないもののある程度までは、外国人が不在でもトレーニング可能である。

「左手でやる」とはどういうことか。利き手で仕事をしたほうが速くて確実な仕事を、あえて、利き手を使わずにやるという意味である。たとえば、楽天の社内英語化も「左手でやる」ことの好例である。日本企業のなかで日本人社員同士が英語でコミュニケーションを図るのは、実に不自然で、効率的ともいえない。しかし、日本人同士だから通じるという環境を捨ててこそ、説明の仕方から仕事の依頼の仕方まで、共通認識がない相手に「どうしたら伝わるか」「どうしたら聞き入れてくれるか」を考え、実践する訓練の場を作り出すことができるのである。

また、日本企業のなかで働いていると、「部下を統治する」「組織を統治する」という感覚にあまりなじまず、調和を尊び「みんなで何となく、うまくやっていく」方法を選びがちである。それが「根回し」であったり「お酒の席でのコミュニケーション」であったりするのだが、グローバル企業でバックボーンが多種多様な社員を相手にその方法は使えない。そこをあえて、日本企業にいながら、そうした日本的・調和型のアプローチを取らずに、人や組織を統治するという意識を持ち、実践することも「左手でやる」の一例である。その際、不自然さや無理やり感は否めないが、グローバルな組織で必要なリーダーシップとコミュニケーション力を鍛えるためには有効である。

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