【特別対談】 日本の企業は“第二の創業”を経て世界でプレゼンスを高めよ 近藤 聡 デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー
×
田北 浩章 東洋経済新報社 取締役編集局長

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

日本中心思考からの脱却

田北 リーダーの育成や登用のほかに、日本企業のグローバル化を妨げているのは何でしょう。

近藤 やっぱり日本人のレンズを通して世界を見ていることが多いと思います。日本はものづくりについてのこだわりは強いけれど、世界の人(顧客)が求めているものへの関心が薄い。海外の市場ではなおさらで、それは当然、日本人のレンズだけでは見えない。やっぱりインドのことはインド人に聞いたほうが、中国の人が何を求めているかは中国の人に聞かないとわからない。このような各国の消費者の目線で、また、B to B企業については、顧客となる海外企業の目線でいろんなものを吸い上げていく必要があります。そのためには、日本の企業自体が、よりダイバーシティに富んだ組織になり、それを育む文化にしていくことは欠かせないと思います。多国籍という観点だけでなく、多くの女性のエグゼクティブが活躍している欧米の企業では、ジェンダーという意味でのダイバーシティも重要な取り組みになっています。今後、労働人口が縮小する日本においても重要な取り組みの1つになってくることは明らかです。

グループ経営にガバナンスを利かせる

田北 日本企業の海外の子会社の社長は「一国一城の主」という感覚があるので、本社の社長も口出ししないと聞いたことがあります。

近藤 そういえばこんなことがありました。欧州に進出したあるメーカーでは、現地にいくつかの製造拠点を持っていたのですが、ある国でつくったほうが安いにもかかわらず、別の国の現地法人トップが、いろいろな理由をつけて、移管に強く反対していました。本社がそれに鈴をつけられるかというと、本当の状況がわからないので何も言えない。子会社の社長に悪意はないのですが、どうしても、自分や自分の会社が評価される方向で動いてしまう。欧米では良くも悪くも確固とした方針に基づいた、トップダウンの要素が強いですが、日本の場合、拠って立つものがないままどうも「遠心力」だけが働きすぎて管理ができない。また、人事評価がグローバル・地域の全体最適になるような仕組みになっていない。本社と地域統括会社、各国の事業体のどこが偉いのかがわからないので、何も決められなかったり、決めるのが遅くなる。結果として全体最適にならないということがままあります。平常時にはそれでも大きな問題にはならないかもしれませんが、ちょうどその企業のプロジェクトを私が担当しているときにリーマンショックが起きました。モノは売れないし、世界中でキャッシュが枯渇していたので運転資金も借りられない。そこでグローバルベースでのキャッシュマネジメントをしようとしても、どんな投資がどの国で行われているかを本社が把握していない。順調なときはコントロールしているつもりでいても、突発的な出来事が起こると途端にわからないことだらけになる。その度に、バタバタと「調査だ」「ヒアリングだ」と。日本の企業って、こんなにも見えていないのかと愕然としました。グローバルに広がった拠点、グループ会社を、全体最適になるように、いかに本社からコントロールできるかについても、今後の大きなテーマでしょうね。

「第二の創業」をめざして

田北 本日お話しさせていただいたような状況にある日本企業に対して、どのようなスタンスでコンサルティングを行いたいとお考えですか。

近藤 ここから先、われわれは世界中どこの国も経験したことがない、少子高齢化をはじめとする諸問題が複雑に絡み合う世界に入っていきます。それをいかに御していくかは日本の問題であり、そのマーケットを前提にした日本の企業の問題です。このような立脚点に立った、「第二の創業」をめざし、グローバルNo.1になるための戦略の構築と実行のお手伝いができればと思います。