新人女子に「酒作り」指示、これはセクハラ? 相手をさせられ激怒する女子に賛否両論

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セクハラによって労働者の人格権が侵害されたといえる場合、そのセクハラは民事上の「不法行為」となり、「損害賠償義務」が発生することになります。また、内容によっては「強制わいせつ罪」などの犯罪になる場合もあります。

今回の事案では、新入社員歓迎会でお酒をつがせたり、集合写真の際、役員の近くに来させたりしたことが問題とされています。確かに、女性の新入社員にとって「おじさん」の役員にお酒をついだり、そばに行ったりすることは、「キモい」と感じることもあるかもしれません。

しかし、飲み会の都度、同じ役員にお酌を強要されるなどの事情があったわけではありません。今回はたまたま、その席上だけで頼まれたにすぎません。そうなると、労働者の意に反する「性的な言動」とは言いがたく、セクハラとまでは言えないと判断される可能性が高いでしょう。

本人のみならず、会社が責任を問われる場合も

他方で、女性社員が明確に「拒否」しているにもかかわらず、役員へのお酌を無理強いしたり、嫌がる女性社員の手を引っ張って役員の隣に連れて行ったりすれば、1回だけでもセクハラになる可能性があるでしょう。

また、仮にこの役員が女性社員の腰に手を回していたり、キスしたりしていたら、原則としてセクハラになります。この場合、民事上の「不法行為」になる可能性が高いでしょう。

さらに、嫌がる女性社員に無理矢理キスした場合は、「強制わいせつ罪」が成立することもありえます。不法行為や刑事事件が成立するような職場のセクハラ事案では、セクハラをした本人のみならず、使用者である会社も責任を負うことがあります。

セクハラに対する世間の目は非常に厳しくなってきています。労働局に寄せられたセクハラの相談件数も、この9年間は、年間1万件前後と高い水準にあります。セクハラが原因で懲戒解雇される、場合によっては刑事事件となり報道されるということも少なくありません。

セクハラは、被害者に多大な精神的苦痛を与えてしまうものです。また、加害者も懲戒の対象となったり、民事・刑事の責任を負ったりすることもあります。お酒の場であっても、勢いに任せてセクハラをしてしまうと、自分の会社員人生を棒に振ることにもなりかねませんので、くれぐれも注意された方がよいでしょう。

古金 千明(ふるがね・ちあき)弁護士
「天水綜合法律事務所」代表弁護士。IPOを目指すベンチャー企業・上場企業に対するリーガルサービスを提供している。取扱分野は、企業法務、労働問題(使用者側)、M&A、倒産・事業再生、会社の支配権争い。
事務所名:天水綜合法律事務所

 

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