知識の習得と人間力養成のバランスを図ることが重要

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思考力や学習態度などを総合的に評価する入試へ

ところで現在、高校教育、大学教育、大学入試の三位一体の改革が推進されています。2020年度からは新しい大学入試制度に移行します。これまでの知識偏重から脱却し、思考力・判断力・表現力、あるいは主体性・多様性・協働性などの学習態度を総合的に評価する入試への転換をめざしています。

昭和女子大学では以前から、AO・推薦入試において学科試験と面接を併用しており、面接を課すことで人間力の評価に一定の成果をあげてきました。今後は、一般入試でも面接の導入を検討していきたいと考えています。

ちなみにアメリカは、ハーバードやスタンフォードなどの有名大学でも、多額の寄付をしている人や、その大学卒業者の子弟は優遇されるのが当たり前になっています。それに対して、日本の大学は学力試験の得点だけで入学者を選抜してきました。保護者の社会的地位や経済力と関係なく、公正・公平に選ぶ制度として受け入れられてきたわけです。けれども、知識の量だけで選考することがはたして正しいのか、強烈なアンチテーゼがいま提示されているのです。

アメリカの大学が、必ずしも公正・公平な選抜でなくても、高い教育レベルを維持しているのは、厳格な出口管理が行われているからです。勉強についていけない学生は進級・卒業できない仕組みが確立されているのです。日本の大学は入試をクリアして入学しさえすれば、卒業はそれほど難しくありませんでした。留年率が高い大学は批判されるような風潮もありました。大学関係者もステークホルダーもその認識を改めて、成績管理、出口管理を厳格にして、卒業生の能力に責任を持つこと、すなわち「質の保証」が重要になると考えています。

グローバル化の進行で英語力の向上が不可欠に

グローバル化への対応も、今後の大学の重要なテーマです。

これまでは日本語ができれば国内にいくらでも就職先が見つかりました。英語に堪能なのは、海外進出をめざす大手企業に勤務する一部のエリートだけでよかったのです。ところが、いまや相当な割合の日本人がグローバル化した職場で仕事に携わるようになっています。上司や同僚が外国人のケースも増えていますし、自分の会社が外国企業に買収されることもありうるでしょう。英語をツールとして使いこなす力が不可欠になっているわけです。

昭和女子大学では、1988年、他に先駆けて海外キャンパス「昭和ボストン」を開設しました。海外生活を体験しながら、アメリカ人教員から英語を学ぶ充実したプログラムを用意しています。単に英語が上達するだけでなく、現地の学生と積極的に交流したり、「昭和ボストン」をファーストステップとして、その後交換留学に挑戦したりなど、学生の意欲的な姿勢が見られ、頼もしく感じています。

キャリアデザインポリシーを設定し、学びの意欲を高める

様々な「気づき」が生まれる「社会人メンター制度」

もう1つ、日本の大学を取り巻く大きな環境の変化を指摘しておきたいと思います。

かつての日本では、企業が人材養成の重要な役割を担っていました。仕事のやり方や、社会人としてのマナーなどは、就職してからOJTを通して学ぶものであり、大学は、幅広い教養や専門的な知識・技術は身につけるものの、直接的に仕事と関係する学びの場ではなかったのです。ところが、企業にそれだけの余力がなくなり、新しい分野にビジネスを広げていかなければならない厳しい状況の中で、大学に即戦力を養成する教育が要求されるようになってきました。文部科学省では、「専門職業大学」という新しい高等教育機関の設置も視野に入れて、検討が進められています。

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