高い技術集積とアクセス
暮らしやすさも強み
阿部 守一
明治期に製糸産業が盛んだった長野県は、その後、時計などの付加価値の高い精密産業に転換し、高度な技術を集積してきた。阿部知事は「超精密加工技術を中心に、常に時代の変化に目を向けて新しい成長分野に挑戦し、近年は情報・電子産業も盛んになっています。このため、進出企業は研究開発にあたって精密関連企業と連携しやすい環境にあります」そう自信をのぞかせる。実際、ここ10年間の研究所立地件数は11件で、長野県は全国3位である(経済産業省「工場立地動向調査」)。
アクセスの良さも魅力だ。高速道路、在来線、新幹線などが県内の主要都市と首都圏、中京圏、北陸を結び、「北陸新幹線を使えば東京~長野間が1時間20分台で結ばれ、金沢~敦賀間が開通すれば関西圏へのアクセスも飛躍的に向上します。リニア中央新幹線の駅も飯田にできる予定です。道路網では、中部横断、三遠南信、中部縦貫の各自動車道の整備が進んでおり、山梨・静岡や岐阜・富山・福井へのアクセスも大幅に向上します」
人材育成に注力してきた教育県・長野は労働力も豊富だ。信州大学、松本大学、長野大学をはじめ、地域貢献度の高い大学が数多くあり、2018年には新たな県立4年制大学も開学予定。「理事長には元ソニー社長の安藤国威氏をお迎えし、グローバルな視点で地域にイノベーションを起こせる人材を育成します」
自然環境の良さと暮らしやすさも強みだ。「豊富な水資源があり、農林水産物を活かした食品産業も盛んです。また、美しい自然環境が創造性を必要とする研究開発などの新たな発想を刺激するのではないでしょうか」。企業としては従業員の暮らしも気になるところだが、「保育所待機児童はゼロ。信州型自然保育認定制度の創設や保育料助成も強化し、子育て世代を応援しています。医療分野では地域医療の整備を進め、子どもたちの医療費助成も充実させました」
全国屈指の優遇措置で
移転も創業も断然有利
企業誘致に向けては、製造業に対する「信州ものづくり産業応援助成金(助成限度額10億円)」やICT産業に対する立地助成金(助成限度額3億円)などに加え、税制面の優遇措置も強化。地域再生法に基づき本社機能整備計画の認定を受けた進出企業は、事業税が3年間95%減額されるほか、不動産取得税も95%減額され、認定対象外の企業にも県独自で支援を行っている。
一方で、「日本一創業しやすい県づくり」を目指し、ワンストップの創業相談窓口設置などの支援策も実施。阿部知事は「県の創業支援資金の融資件数も着実に増えており、この勢いを維持していきたい」と熱く語る。
首都圏、中京圏、北陸とも好アクセスの長野県
信州で取り組む
グローバルプロジェクト
知事は、地方創生の戦略には大きく二つの視点があると強調する。「一つは地域由来の経済循環をどう促進するか。もう一つがグローバルな視点に立ち、成長産業をどう生み出し、どう支援していくかです」。このため長野県では、成長期待分野として航空宇宙や健康医療等にフォーカス。航空宇宙産業では飯田・下伊那の南信州地域が国際戦略総合特区に指定され、すでに国産初のジェット旅客機「MRJ」への部品供給や高効率の感染症検査装置の開発などで成果をあげている。
もともと、佐久間象山に代表されるように進取の気性に富む長野県。実際、イノベーション活動の実施企業数の割合でも全国トップとなっている(帝国データバンク調査:15年10月14日発表)。「長野県を、日本で最もクリエイティブな地域にしていくため、企業の皆さんの活動をオール信州でサポートしていきます」と語る阿部知事。その総合力に対する企業の満足度は非常に高く、成長戦略を実現するためには理想的な環境といえそうだ。
理想的な職場を実現。
産・学との連携も期待
取締役常務執行役員
原 泰彦
当社では、さらなる成長を目指した事業構造改革の一環として、技術開発拠点を東京から長野に移し800人以上が移転しました。新たな拠点として建設した「先端技術センター」は技術者の声を全面的に活かし、コミュニケーションの取りやすさや研究・実験のしやすさ、創造力を高めるオフィス環境など、すべての面において理想的な職場にすることができました。たとえば、各階に実験用バルコニーを設けることで、研究と実験の連携も密になっています。
豊かな自然環境に囲まれていることでON・OFFの切り替えがしやすく、また社員の子どもたちも幼稚園や小中学校にスムーズに転入させていただき、これだけの人数が移動しながら、移転を理由に会社を離れた人間は一人もいません。移転に際しては、県の「信州ものづくり産業応援助成金」や税制の優遇措置も活用させていただきました。長野県には情報・電子産業に優れた企業が多く、信州大学にも近いので、今後はそうした連携も活かして成長戦略を実現していきたいと考えています。
良質な水、澄んだ空気、人材。
酢づくりの理想がここに
代表取締役社長
内堀 泰作
酢づくりに欠かせないのが水、空気、酢酸菌です。当社が生産体制の向上を目指し新工場の候補地を探すなかで出会ったのが、中央アルプスの恵みの良質な軟水、澄んだ空気、そしてそれらが酢酸菌に理想的な環境を作り出している、ここ長野県上伊那郡飯島町でした。実際、2006年から稼働したこの工場で作った酢は、非常にいいものができました。また信州りんごを使った新たな製品も生まれています。自分の働く工場が会社の成長を担っていると実感できることは従業員のモチベーションにも直結し、働く姿も生き生きとしています。工場にお越しになるお客様も年々増え、ここでできる製品なら間違いないという言葉をいただくようになりました。信州大学をはじめ微生物等の専門知識を学んだ学生が、意欲を持って毎年入社してくれることも、大きなプラスになっています。将来的には、世界の人から「日本アルプスの麓の飯島町で作った酢は他で真似ができない」と言われるよう、品質を磨いていきたいと思っています。