攻めるべき営業先を可視化するために 東京商工リサーチ
投資の最適化と運用の効率化
では、どのような企業がTSRのサービスを活用しているのだろうか。気になるところだ。
「業種に傾向はありませんが、グローバルに展開されているお客様が大きなボリュームを占めています。グローバルで高い存在感を誇るD&Bネットワークのメンバーであることも影響しているのでしょう。また、私ども自身が実際にサービスを利用していることもあり、活用方法などについてリアルなアドバイスを提供することができます。おかげさまでお客様からは高い評価もいただいています」と、渡部氏は語る。
国内と海外とでは、同じグループの企業でも、あるいは子会社でさえも、顧客管理やデータベースのシステムやフォーマットが異なることも少なくないという。しかしTSRはD&Bと提携しているため、国内外の企業のデータを共通のフォーマットで顧客に提供することが可能だ。グローバルに展開している企業からの評価が高いことも納得がいく。
しかし、正確な企業データに基づいたマーケティングが必要なのは、グローバル企業に限らない。業種、業態、規模などを問わず、BtoBビジネスを展開している多くの企業も新しいマーケティングの導入が課題になっていることだろう。インタビューの最後、「実際に、中堅・中小企業からの相談や引き合いも確実に増えています。何よりも、お客様が自社で正確な企業データを収集しメンテナンスすることは、大きな困難と負担をもたらすことになるでしょう。この領域については、私どもに任せていただければ、より効率的で精度の高いマーケティングができるようになると確信しています」と、弓削氏はコメントした。
BtoBビジネスのマーケティングは間違いなく変革を迫られている。そして、ABMなどの新しいマーケティングには、正確な企業データが不可欠である。これから勝ち残っていくのは、そのことに気づき、いち早く実践に移すことのできる企業なのではないだろうか。
【ケーススタディ】シスコシステムズの場合
マーケティング改革でパイプラインが拡充
コンピュータ・ネットワーク機器を企業向けに販売しているIT大手、シスコシステムズは、より効率的で効果的なマーケティングを模索していた。マーケティング本部コマーシャルマーケティング マーケティングマネージャーの中東孝夫氏は2年前の着任以来、マーケティングにおけるデータ活用に積極的に取り組んできた。
「まず、顧客情報のマスターデータを見直すことから始めました。企業データをクレンジングし、きれいな状態にメンテナンスしたのです。そこで、顧客層のうち購入ボリュームが大きい上位のお客様のデータを分析することで、オポチュニティの大きな見込み層をリストアップして営業部門に渡すのです。“2対8の法則”とも言われていますが、上位のお客様とそれ以外のお客様とでは、マーケティングとしてもアプローチを変えていく必要があります。優先順位を定めて順次、対象を拡大していくアプローチのほうが、ビジネスインパクトが大きいのです」
こう語る中東氏は、マスターとすべき企業データは「品質、更新頻度、正確さ、カバレッジの広さなどの点から適切に選択する必要があります」と言う。
こうした企業データを軸にした取り組みにより、マーケティング部門が発掘し、営業担当者にバトンタッチされる案件も、大きく成果を向上させているという。
一方、企業データの提供会社に関しては、「さまざまなリクエストに対する柔軟な対応という点も選択に当たってのポイントです」とのコメントも。
つねにIT業界をリードしているシスコシステムズが、データ活用による先進的なマーケティングの分野で今後どのような方向に進み、ビジネス的な成果を上げていくのか、注目だ。