攻めるべき営業先を可視化するために 東京商工リサーチ
優良な見込み客を絞り込む
品質の高い企業データによって、顧客企業をしっかりと把握する。購入額、購入頻度、購入のタイミングなどを正確につかむことにつながる。こうした取引実績と、たとえば従業員数や拠点数、売上高といった企業データを分析することで、顧客の特徴を明らかにするサービスを提供している。営業本部の渡部博史部長が後を受ける。「優良顧客の特徴を正確にプロファイリングした結果、たとえば、それまでの製造業に強いとの思い込みが的外れだった、などと気づくこともあります。データが導き出した“売れる理由”は、業種以外の要素にあったのです」。すると、どうなるか。「優良顧客と同じような属性を持つ企業をターゲティングすることで、効率的なマーケティングが可能になるのです」。
これが“企業情報プロファイリング”というソリューション。業種や従業員数など属性データを項目ごとに統計的手法を使い点数化する技法だ。企業データベースに連なる企業にそれぞれスコアをつけるので、攻めるべきターゲットをスコアによって絞り込むことができる。
この企業情報プロファイリングは、顧客となる企業をよく知るための技術である。それも定性的にではなく、定量的に知ることのできる方法だ。定量的にとらえるからこそ、自社の製品やサービスがどのくらい売れる可能性があるのか、高い精度で予測することができる。つまり、より最適なマーケティングや営業の方法が見えてくるのではないだろうか。結果として投資対効果の高い経営資源の投入につながり、オペレーション効率化への道が開けるというわけである。
このように、顧客データを活用してターゲット企業を明確に定義しアプローチするマーケティング手法を“アカウント・ベースド・マーケティング(ABM)”という。考え方そのものは以前からあったが、ITの発達で精度の高いABMが実現できるようになり、キーワードとしての露出も増えているという。実際、TSR自身、ABMの手法を用いてマーケティングや営業活動の効率を高めることに成功している。「たとえば、メールでコンテンツを送付する場合、現在はそのコンテンツに興味を持つと想定される層をセグメントして送ることができていますので、以前は10%台だった開封率が50%前後にまで高まりました」と弓削氏は胸を張る。「関連して、最終的に売り上げに結びつく率も高くなり、売上金額そのものも拡大しています」。
もちろん、ABMを実践すべく、TSRに相談する企業も増えているようだ。「企業情報プロファイリングに対する引き合いは急増しています。昨年は一昨年の4~5倍もありました。日本企業にマーケティングオートメーション(MA)の考え方が浸透し始めたのは一昨年ごろだろうと認識していますが、昨年からは実際に活用する企業が増えてきたという実感があります。その結果、プロファイリングなどの必要性が注目されるようになったのでしょう」と弓削氏。
渡部氏は「ABMのカギを握るのが、企業データの品質です。これまではリスクマネジメントに活用されてきた与信管理のための企業データベースを、攻めのマーケティングにも活用できるという機運が高まっていると自負しています」と続けた。