木本:メリットを感じたからすべての政党が賛成した、と。
御厨:本当は、各政党にとってメリットはないと思う。若い高校生に政治教育なんて、余計なお世話なんです。「政治とは?」と教えても、若者は投票しませんよ。「やっぱりつまらない」となる。
木本:日本は政治に興味がない若者が多い国だと思うんですけど、これは何ともならないのでしょうか。
御厨:若者が「政治は面白い」と思わせる仕掛けは必要でしょう。たとえばSNSを使ってという話があります。ただ、自民党はSNSを使うといっても中央指導、後ろに大きな広告代理店がいて指揮しているわけです。
木本:そうなんですか。ちゃんとプロデューサーがいるんですね。
御厨:そう。ある地域に新人候補が立つとする。ところが、その候補は地域の情報を捉まえられない。だから中央の党本部が情報を収集して、「あの場所に行って演説しろ!」という指導をするわけ。そんなやり方でいい選挙をできるとは思わないよね。
木本:自分の足で稼ぐわけじゃないんだ……。
御厨:自分で情報を取って、自分の意思で動けよ、と思いますが、現実にはそうではありません。
木本:そうだったんですね。
自然発生でブームをつくれるか
御厨:もちろん、ユニークな事例もあります。前回の参院選でいちばん面白かったのは、ミュージシャンの三宅洋平さん。街頭ライブで演説しながら、ツイッターで答えたりして、「だんだんこのおっちゃん面白い。面白いから支援しようか」という感じになった。これが本当の選挙活動でしょうね。ある種、自然発生でやらないといけない。党の中央からしてみるとSNSで動いていくのは怖いんです。既成政党にとって、候補者が自分たちの掌の上で動いてくれるから安心で、そこを外れると怖いんですよ。
木本:なるほど、今後はそんなところも注意して見ていきます。ありがとうございました。
(構成:高杉公秀、撮影:梅谷秀司)
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