今の国会は公開パフォーマンスを行う劇場だ TKO木本、御厨貴・東大名誉教授に政治を学ぶ

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御厨:そう、法案の審議にあたっていちばん議論をしているのは内閣法制局です。ここはものすごくしっかりしている組織。だから、最初にここに法案を持って行く。間違いを犯していないか、新しい解釈が憲法上大丈夫なのか、ここで議論をするわけです。

すべて法制局で官僚との間で決め、そのあとに党の政務調査会に持っていったりする。実はこの時点で、かなり出来上がって、きちんとした法律になっている。国会に出す前には、野党の意見も聞いている。そうすると最後は儀式でしかありません。

木本:まさにセレモニーだ。今それを知って自分にとっての革命が起きました。国会が主戦場だと思っていましたから。

御厨:裏に本当の戦場があって、主戦場は表に見せている。

木本:公開パフォーマンスの場!

御厨:だから見てくれのいい人は得をするし、話ベタの人は損する。能力の差は出てしまう。芸能界もそうでしょうが、「ふっ」と言葉が出る人と、「うっ」と詰まる人がいますよね。言葉が詰まる人は損なんです。その時に「ワー」と攻められちゃいますから。

木本:僕たちお笑い芸人もつねに戦っていますが、相方と一所懸命考えたネタで爆笑をとって面白いと言われても、次にフリートークできっちり受け答えできるかを問われるのがテレビ。それと近いですかね?

御厨:近いですね。

参議院は本当に要らないのか?

木本武宏(きもとたけひろ)/1971年大阪府生まれ。1990年木下隆行とお笑いコンビTKOを結成しツッコミを担当。2006年、東京へ本格的進出。S−1バトル優勝、キングオブコント総合3位などの受賞歴がある。1月13日スタートのテレビドラマ『ヒガンバナ〜警視庁捜査7課〜』で刑事役に挑戦中

木本:なぜ2院制が必要なのか。これももう少し深掘りして聞きたいです。

御厨:これは国会議員の数が多すぎるという問題ともつながっています。いちばんの問題は参議院も衆議院も選挙の母集団がほとんど変わらないことです。衆議院にも参議院にも同じような人が集まっている。

木本:だったら参議院は要らない?

御厨:慎重に審議するためだと、憲法制定の時に言われました。日本人は熱しやすく冷めやすい。戦前も国家総動員法をあっという間に通す。だから、ちょっと頭を冷ますためにはもう一院あった方がいいというのが、当時の考え方でした。「待った」をかける役目。

木本:吟味に吟味を、ということですね。

御厨:そう。でも現代では機械的になっていて、内閣法制局で練りに練って作ったものが出てくるならば、2回やることにあまり意味はない。

次ページ志はすばらしいものだけれども…
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