2016年、円高に転じるリスクは低下している

金融緩和継続の姿勢を示した日銀の補完措置

2016年のドル円見通しは円高派と円安派に分かれている。日銀が金融緩和継続の方向を示したことで、どう動くのか(写真:AP/アフロ)

12月18日に日本銀行から、予想外の量的金融緩和に関する補完措置が発表された。これは、声明文あるいは黒田総裁の記者会見でも明らかになったように、従来の量的金融緩和政策の補完措置として位置付けられ、政策目標であるベースマネーの増加幅が維持されているという意味では、景気・インフレ率に働きかける追加金融緩和ではない。

マイナーとはいえ予想外の政策変更であり、かつ上場投資信託(ETF)の買取り拡大がメニューとして入ったことで追加金融緩和に踏み出したかのような報じられ方をしたため、発表当日、金融市場は乱高下した。ただ、追加のETF買取り措置は、日銀が保有する株式売却に備えた対応であり、株式需給への影響はほぼ中立であることが理解されたこともあり、最終的に金融市場は株安・円高で反応した。

市場がネガティブに反応を示した理由の一つは、「ぬか喜び」に終わったことに加えて、今回の補完措置に対して「日銀の金融緩和が限界に近づいている」ことを示唆しているという見方がある。「購入国債の年限変更なしに、国債買入れによるベースマネー拡大が難しくなっている」という解釈だ。ただ、日銀による国債購入に限界が近づいているとする議論について、説得力がある見解を筆者は聞いたことがない。たとえば「出口に伴うコスト」が大きい故に限界という議論は、何らかの理由で量的金融緩和を強化したくないだけの理屈にしか筆者には聞こえない。

株式購入の政策メニューには疑問

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実際には黒田総裁などの発言を踏まえると、長期国債買入れ拡大などの追加的な量的金融緩和は常に念頭にあるし、そして18日の対応は、大規模な国債購入を継続することに備えて必要な措置を講じた意味合いが大きいだろう。当社を含め市場の一部では、2016年前半にも日銀による量的金融緩和のテーパリング(縮小)が意識され、それが円高要因になるシナリオが警戒されていた。こうした疑念をぬぐうために、補完措置を講じることで金融緩和強化の方向性をあえて示したのかもしれない。

発表当日の株式市場などの初期反応は芳しくなかったが、実際に債券市場では10年満期ゾーン以降の長期金利が低下するなど、補完措置によってQQEの効果は狙いどおりに強まったと言える。

ただ、今回の政策メニューには、筆者が首をかしげざるをえないメニューも入っている。それは、3000億円の規模で、JPX日経400や新たなETFの購入を通じて、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」を支援するという政策メニューである。

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