部下を育てるにはただ「見ている」だけでいい あれやこれやのテクニックより大事なこと

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わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)

最終回の視聴率が22.3%と、大人気を収めた連続ドラマ「下町ロケット」。その中盤の放送回において、こんなシーンがありました。新たな夢に向かって歩き出そうとする娘(土屋太鳳)が川沿いの土手で、父(阿部寛=主人公)に向かって涙混じりに「(ちゃんと私のこと)見ててね!」と訴える……。

今回はこの「見る」という行為について考えてみたいと思います。

意外なきっかけで、カンニングが激減

アメリカのある大学でのエピソード。生徒たちの間でカンニングが横行し、試験の答案はほとんど同じようなものばかりに。頭を抱えた学校側は試験官を増員して監視しますが、状況はいっこうに改善しません。

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ところがあるとき、カンニングが突然、激減しました。生徒達の答案は、まるでこれまでのことがウソのように、それぞれの努力の跡が見られるものになっていたのです。

その改善の理由というのが、「その日はたまたま、試験官が教室の後ろに座っていた」というもの。

試験官が前に座っている分には、生徒たちはいくらでもその目を盗むことができます。ところが試験官が後ろに座っていると、「見られているかもしれない」「もしチェックされていたら」という恐怖心から、それぞれが自発的にカンニングをやめたのだとか。ちなみにその日の試験官は、単なる気まぐれで後方に座り、試験の間中、窓の外をぼーっと眺めていたそうです。

このエピソードからわかるのは、人は「見られている」だけ、「見られている」と感じるだけで行動を変える、ということ。「カンニングをするな」と言われたからではなく、なんなら実際に「見られていた」わけでもないのに、「見られている」と思っただけで、非行を改めた、ということです。

これは、監視することでアンフェアが正された、という例でしたが、この気づきは、ポジティブな方向にも応用がききます。つまり、きちんと見守ることで相手に努力させる、愛情を持って見つめることで正しい行いに導く、という方向です。

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