去る1月2日・3日と行われた第92回箱根駅伝は、青山学院大学が2年連続2度目の総合優勝を果たしました。1区から10区まで一度もトップを譲らない完全優勝は実に39年ぶりの快挙。さらには今回の優勝メンバー10人のうち、卒業で抜ける4年生は4人だけ、と来年以降も「盤石の青学時代」が続きそうな気配です。
指揮を執る原晋監督は、昨年、青山学院大学を初優勝に導いた人物。「奇跡の立役者」と大変な話題になりました。注目されたのは、本人に箱根駅伝の出場経験はなく、元中国電力の営業マンから転身したという異色の経歴からだけではありません。「”チャラい”は、ほめ言葉」「監督の言うことをそのまま聞くような選手には興味がない」など独特なコメントでも大いに目立ち、昨年1年間、メディアや講演会から引っ張りだこでした。
その指導法は、選手の自主性を重んじてのびのびと走らせるもの。いわゆるスパルタ体育会系のイメージと逆行していて、とてもイマドキなように見えますが、それは当然リスクもはらみます。結果がすべてのスポーツの世界ですから、今回優勝を逃せば「やはり昨年の優勝は偶然だった」「そんな甘い指導法だから弱くなったんだ」と批判にさらされかねません。そんなプレッシャーをはねのけての、見事な連覇でした。
原動力のひとつは「言葉の力」
原監督は、指導方針としてしばしば「言葉の力」を挙げています。
「ワクワク大作戦(2015年大会)」「ハッピー大作戦(2016年大会)」など自らキャッチフレーズをつける力に長けているだけでなく、選手たちの言葉の力を鍛えることも怠りません。「監督から『ああしろ、こうしろ』と言われてやっても意味がない。自分たちで自発的に目標を定めて『やる!』と言わないと、モチベーションにつながらない」というのがその狙いなわけですが、それを象徴するようなエピソードがあります。
今回、ラスト10区を走った渡辺利典選手(4年)は、大会前の記者会見で「自分のテーマは”復讐”」と物騒な言葉を使って気持ちを表現。というのも、箱根の前の大きな大会(全日本大学駅伝。青学の結果は2位)で起用してもらえなかった悔しさを、今回の箱根駅伝にぶつけたい彼は、「快走して、やっぱりあのとき使っておけばよかった、と監督を悔しがらせたい」と決意を語ったのです。
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