やたらと「兼務」、今どき会社員たちの苦悩 人事は断れない、さあどうする?

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「兼務」を命じられたら、仕事はどんな状態になるのでしょうか(イラスト : jesadaphorn / PIXTA)

芸能の舞台では、早替えで何役もこなす役者に、観客たちがあっと驚くシーンに遭遇することがあります。

歌舞伎であれば「変化物」と呼ばれて、役者が次々と異なる役柄に扮して踊る演目のこと。舞踊曲「八重九重花姿絵」では「五郎」「若衆」「稽古娘」「勇み」……と9つの役を1人の演者が次々と変わって踊ります。「同じ役者が演じているとは思えないくらいに違っている」と思わせるのが妙。こうした演じ分けができることが役者としての高い評価につながります。

兼務を命じられるのは、仕事ができる証し?

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では、会社の仕事でも同じでしょうか? 近年、人手不足の影響か、複数の役割をこなす「兼務」を発令される職場が増えています。たとえば、本社で営業企画に所属していた社員が

≪4月から営業企画部兼務とする≫

と別の部署の仕事で任用されるようなケースです。

大抵の会社では主務と兼務に分けて発令され、兼務の仕事は人手不足の組織を暫定的に「お手伝い」する意図であったりします。たとえば、営業部門が業績好調で人員を増強。グループ数を増やしたもののグループマネージャー(GM)の数が足りない。そこで、

「新しくGMの昇進があるまで、誰かが兼務して対応しておこう」

というイメージ。専任の人材がきちんと配置できる状態になれば、兼務は解かれることになります。

それくらいであれば、兼務で任用された人も「暫定的な人事だから引き受けよう」と許容できる人が大半かもしれません。ただ、兼務が何年も続いたら、あるいは兼務が幾つも増えたらどうしますか? さらに言えば、兼務することで処遇や給与の矛盾を感じたらどうしますか?

組織図上では兼務には*印がつく場合が大半。この*印がつく人は兼務ができるくらいに仕事ができるとの評価を示すものとも言えます。ゆえに兼務の*印が複数あることを自慢する人もいます。

「今回は3つも部署を兼務することになって、忙しくなりそうだ」

と忙しい自分アピールする人も。こういう人は、おそらく兼務の数をいくらでも増やしたいくらいかもしれません。

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