海外発「ECB、石油、円」が日本株下落の要因だ 薄商いの中で心理的動揺が出た波乱相場

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ECB、石油、円高といった要因から日本の株式市場は波乱相場となっているが、心理的な動揺が色濃く出いる(写真:AP/PIXTA)。

英語で、年末(End of Year)のことを省略してEOYと記すことがある。たとえば、グラフで毎年末値のデータをとって描く場合に、注釈で(EOY)と入れるように。12月の相場は、穏やかなものかと見込んでいたが、想定外に大きく荒れている。この背景には、EOY特有の要因がある。すなわち、海外投資家の多くがクリスマスを控えて半ば休暇モードとなり、積極的な売買を控えている点だ。

もともと日本の株式市場については、多くの海外投資家から、「日本は、経済は先進国だが株式市場はエマージング(新興諸国並み)だ」と、揶揄されてきた。これは新興諸国の株式市場と同様、海外投資家の売り買いに株価が左右されている、という意味合いだ。

実際、東証一部における海外投資家の買い越し・売り越し(金額ベース)と、日経平均株価の騰落を、毎週照合すると、買い越しと株価上昇、売り越しと株価下落が、多くの週で一致している(今年1月第1週から11月第4週までの47週間において、一致した週が41週と圧倒的)。

これは、国内投資家の層の薄さが大きく影響しているのではないだろうか。たとえば米国では、米国内の投資家が独自の信念をもって、盛んに米国株を売買している。したがって、海外投資家の買いに売り向かい、売りに買い向かう国内投資家の層が厚い。日本市場は、残念ながらそうした状況からは程遠いようだ。

このため、EOYで海外勢の売買減少が生じている薄商いの中、ちょっとした海外発の売り要因で国内株価が下振れしやすいのだろう。

 EOYへの過剰反応が株価の下げ要因

こうしたEOY特有の地合いのなか、海外から降りかかってきた国内株価の下げ要因は、やはりEOYであった。すなわち、ECB(欧州中央銀行)の追加緩和に絡む行き過ぎた騒ぎ(E)、原油価格下落(OilO)、円高方向への振れ(YenY)である。

こうしたそれぞれの要因で日本株が大いに下振れしたのは、いずれも行き過ぎであったと言える。まずEのECB123日(木)に打ち出した追加緩和が、予想より小規模だとして世界的に株価が売り込まれた点については、追加緩和を予想していたところ金融が引き締められた、というのであればともかく、追加緩和自体は行なわれたわけだ。

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