スクリーンに映し出されたクラブの写真に、会場からなんともいえない、小さなうなり声が聞こえた。少なくとも筆者と周りにいた聴衆はうなった。
先日、東京都内で開かれた「第2回ゴルフビジネス フォーラム」を聴講した。テーマは「潜在ゴルファーを掘り起こそう!~720万人ショックを乗り越えて~」。最盛期の半分近くに減ったゴルフ人口減少を止め、新規ゴルファーを開拓するにはどうするかという取り組みを進める人たちの経験談などを通して、その策を探っていくものだ。
学校の授業でゴルフを経験
その中で注目したのが、ゴルフを学校の体育の授業として採り入れ、中学、高校、大学生に経験してもらうという取り組みだった。静岡県ゴルフ場協会では「静岡県ゴルフ特区」を宣言し「富士山のようにゴルファーの裾野を広げる」ことを目的に、スクールゴルフプロジェクトとして、中高校の体育の授業にゴルフを採り入れた。「ゴルフが持つ規律、礼儀、気配りなど教育的な利点を強調して、教育委員会の承認を得られたのが大きかった。指導にはプロ会も協力してくれた」という。
資金も一昨年までゴルフ場のプレー費と一緒に徴収していた緑化協力金(1回50円)を教育に使うように転用。ゴルフ場82コースが協力し、中学13校、高校56校で1万人以上が「ゴルフ授業」を受けていることが紹介された。新規ゴルファーの入口として、いまのところ県単位で行っているのは静岡県だけというが、個別の取り組みは各地で行われているという。会場では拍手が起きた。
冒頭の「写真」は、そのあとで大学での取り組みについて、武蔵野美大でゴルフを授業に取り入れている北徹朗准教授が状況を説明した際に使ったものだった。授業に使用しているクラブが「古くてバラバラで、よく折れる。左利き用、レディースも足りない。クラブ提供をお願いできないだろうか」という業界への要望の資料として、現在使っているクラブを映し出した。
何が会場をそういう雰囲気にしたかというと、中に「パーシモン」のクラブが映っていたからだ。パーシモンのクラブはすでに20年以上も前にほとんど消えている。今のボールで打ったら、ヘッドが割れる可能性もある。初心者が使うには難しいクラブでもある。
そんなクラブを授業で使っていることを知り、「これじゃ、だめだ」と思ったのは筆者だけではなかったのだと思う。大げさに言えば、せっかくゴルフを初めて経験した学生をゴルフ嫌いにするためのクラブ、ともいえるかもしれない。
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