新卒採用ルール、再度変更で起きる"副作用" 「8月」から「6月」に再び前倒しを検討

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こうした状況を受けて、経団連の榊原定征会長は9月7日に「スケジュールを元に戻すのも選択肢」、10月16日には「選考開始は6月でどうか」などと発言し、現行の指針に問題があることを認めていた。新スケジュールが学生と企業の双方に負担をかける上に、守らない企業が多ければ変更せざるを得ないというわけだ。

8月から6月への前倒しによって、問題は解決するのだろうか。また、新たな問題が生じることはないのだろうか。

面接開始時期のピークは3~5月

まず、就活期間は短くなるだろう。もともと多くの企業は2017年卒採用から指針を無視して採用を前倒しにする方針だった。人事領域の調査を手掛けるHR総研が8月に行った調査によると、多くの企業が今年の12~2月にかけてインターンシップを行う。面接開始時期のピークは3~5月だ。8月以降に内定出しを開始すると答えたのは、大手企業の22%に過ぎない。

また、人材採用コンサルティングのジョブウェブが9月下旬に行った調査では30%の企業が年内に選考を開始すると回答している。

今年の採用が思うようにできなかった企業が、2017年卒採用では早めに採用活動を始めて巻き返しを図ろうとしているのだ。

それでは、中小企業は十分に学生を採用できるようになるのだろうか。従来は最初に大手企業の採用が始まり、それが落ち着いてから中小企業の採用が開始された。大手企業の内定を取った学生は中小企業を受けなかった。

しかし、今年はスケジュールの変更によって、中小企業から採用が始まった。学生はとりあえず中小企業を受けて保険として内定を取った。その後も就活を継続し大手企業から内定が出れば中小企業を辞退した。その結果、定員の数倍の内定を出しても人数を確保できない中小企業が続出した。なんとか学生を引き留めたい中小企業は、大手企業を受けさせないように働き掛けたため、これがオワハラとして大きな社会問題となった。

現3年生の採用で従来のように大手から先に採用活動が始まれば、中小の内定辞退者は減少して採用難はある程度解消するだろう。しかし、2017年卒採用では、大手も中小も早期に採用を開始する姿勢を見せており、大手と中小が同時に採用活動を展開するだろう。中小企業にとって採用しにくい状況はあまり変らない。

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