新卒採用ルール、再度変更で起きる"副作用" 「8月」から「6月」に再び前倒しを検討

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新たに生じる問題とは、公務員試験と民間企業の併願がさらに難しくなってしまうことだ。

公務員試験は6~8月が多いので、民間企業の選考ともろに重なる。2015年卒採用の時は民間企業の選考開始が4月だったので、5月の連休明けまでに民間企業の内定を取り、それから公務員試験に臨むことができた。

2016年卒採用では企業説明会やOB・OG訪問などの活動と公務員試験が重なったので、学生の負担は重くなった。そして、2017年卒では選考と試験が重なるため、さらに負担が増す。選考日と試験日が重なれば、どちらかをあきらめなければならない。

教職課程を履修している学生にも打撃

また、教職課程を履修している学生にも打撃を与えることになる。教育実習は6月に行われることが多い。教育実習に行くならば、期間中は選考を受けられないことになる。

2016年卒の就活でも民間企業の就活のために教育実習に行かず、教員免許取得をあきらめてしまった学生がいたが、2017年卒ではこうした学生が増加する可能性がある。

日本で初めて就職協定が結ばれたのは1928年。当時は極度の就職難で、学生の就活が過熱していた。学業の軽視が問題になり大手企業と有名大学の間で「入社試験は卒業後」という協定が結ばれた。だが、協定に参加しない企業は大学4年の年末年始から入社試験を行った。

その後、就活ルールを作っては破るということを87年間も繰り返してきた。問題になるのはいつも「選考時期」だ。87年かけてもルールを守れないならば、今後どんなルールを作っても守れないだろう。

日本には新卒採用をする企業が1万7000社超もある。業界や企業によってさまざまな事情があるにもかかわらず、選考時期を1つにするのは合理的とは思えない。政府や経済団体が、一方的に企業の採用時期を決めるという方式は限界が来ているのではないだろうか。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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