なぜ日本人は池井戸潤ドラマに惹かれるのか 今年4本目の「下町ロケット」に注目も
2015年のドラマ業界は、まさに小説家・池井戸潤さんの独壇場と言っても過言ではありません。春に放送された『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)は、「月9としてはシリアスすぎる」と言われながらもヒット。続く夏には、『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)が同クール唯一の全話2ケタ視聴率を記録したほか、平均でも14.4%と断トツ1位に輝きました。
さらに、『民王』(テレビ朝日系)も深夜枠ながら『YAHOO!テレビ』のクチコミランキングで2位以下に大差で圧勝するなど、数字と評判を独占。そして10月18日よる9時スタートで、直木賞受賞作として「最高傑作」の呼び声も高い『下町ロケット』(TBS系)が放送され、早くも「視聴率トップ間違いなし」と言われています。
数字や評判もさることながら、驚くべきは今年放送の4本で民放主要4局を総ナメにしていること。しかも、ラブストーリーで有名なフジテレビ『月9』、59年の歴史を持ち男性視聴者も多いTBS『日曜劇場』、女性支持の高い日本テレビ『水曜ドラマ』、コメディからお色気までエンタメ度の高いテレビ朝日『金曜ナイトドラマ』と、視聴者層の異なる放送枠で結果を出しているのです。2013年の大ヒットドラマ『半沢直樹』(TBS系)から2年が過ぎてなお池井戸潤さん原作のドラマが支持される理由は、何なのでしょうか。
おカネとプライドをめぐる対立構図
ひとつ目の理由として挙げたいのは、登場人物の対立構図。池井戸さんの小説は一般企業を舞台に描くことが多いため、おカネやプライドをめぐって「誰と誰が何のために対立しているのか?」イメージがしやすく、欲望や葛藤、理不尽や疑惑が飛び交うなど、ドラマ性がふくらみやすいのです。
このイメージのしやすさこそが、現代ドラマにおけるヒットの秘訣。21世紀に入ってからパソコンやスマホなどの平面情報をそのまま受け止める機会が増え、思考する頻度が減りました。なかでもプライベートにおける思考時間の減少は著しく、テレビに対しては“ながら視聴”の多さもあって、「わかりにくい」=「つまらない」と瞬間判断する人が激増。短時間のネット動画が人気を集めるなど、「じっくり見て思考をめぐらせる」モニタリング力が落ちている中、池井戸さんの小説はドラマ化に最適なわかりやすさがあるのです。
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