日本人は「限界費用ゼロ社会」を知らなすぎる 文明評論家リフキンが描く衝撃の未来

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一方、日本政府は、台頭しつつあるデジタル化された輸送/ロジスティクス・インターネットにおける、自動運転テクノロジーの普及に向けたグローバル標準の確立で、ヨーロッパとアメリカの自動車メイカーに先を越されることを懸念し、この方面にも介入してきた。

日本の国土交通省は、国内の三大自動車メイカーを動かし、日立、パナソニック、デンソーなどの部品供給業者や、名古屋大学と東京大学の研究機関と手を組んで、安全規則と部品仕様書のための規約や規制、基準を協働して定めるよう促している。

これと並行して、日本政府はドイツの競争相手に追いつくために、自動運転車の試験道路の建設用にも8300万ドルを注ぎ込んでいる。

極限生産性を実現する日本のスマートシティ

コミュニケーション、エネルギー、輸送/ロジスティクスを統合し、IoTプラットフォーム上で稼働する単一のシステムにまとめ上げたスーパーインターネットが出現することにより、日本全国でいわゆる「スマートシティ」創出のためのインフラが整う。

現在日本には、京都・大阪・奈良にまたがるけいはんな学研都市、横浜市、北九州市、豊田市の四つのスマートシティ・プロジェクトがある。これらのプロジェクトは、あらゆるスマート器具・機械・家電製品を互いにつなぎ、あらゆる家庭、近隣地域、オフィス、工場、倉庫、自動車、道路網、小売店とも接続し、リアルタイムでビッグデータを提供するというものだ。

分析技術を用いてそのビッグデータを調べれば、アルゴリズムやアプリケーションが作成できるので、これらの都市圏における無数のバリューチェーンでの経済活動を管理し、それに動力を供給して動かすにあたり、個人、家庭、企業、政府機関は総効率と生産性を劇的に上げ、限界費用を減らすことができる。

日本のスマートシティは極限生産性の実現を可能にするので、日本企業はデジタルで限界費用の低いグローバル経済で競争力を維持できる。これも、生産性を高めるうえで不可欠の総効率向上に対する、日本人のこだわりを示すさらなる例だ。

スマートシティが日本中に広まるにつれ、しだいに多くの財とサービスの限界費用がゼロにさえ迫り、共有型経済は従来の資本主義市場と並んで成長し、繁栄することが可能になる。日本人、わけても若いミレニアル世代は、新世代のアプリを活用し始めており、そのおかげで、バーチャルとリアルの両方の財とサービスを低い限界費用やほぼゼロの限界費用でシェアできるようになってきている。

若者たちは音楽やブログニュース、ユーチューブの動画、電子書籍、ウィキペディア上の情報、大規模公開オンライン講座MOOC(ムーク)を生み出してシェアしており、しだいに相互接続してゆくデジタルスペースで、まさに今、有形の財の生産とシェアを始めている。

2020年の東京オリンピックに向けて観光事業を促進するために、日本政府は経済成長の青写真を用意し、自宅所有者やアパートの住人がホームシェアリング・サービスで観光客に住まいをシェアしやすくしようとしている。エアビーアンドビーだけでも、シェア可能な家やアパートをすでに1万件以上ウェブサイトに載せている。

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