子どもにプログラミングを学ばせる真の意義 根本にあるのは、親たちの切なる願いだ

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インターネットの発達とともに、スマホの普及などでどんどんITが日常に溶け込んでリアルの世界を変えていっており、もはや「ITなしでは生きられない」世の中だ。ITエンジニアではない一般的なビジネスパーソンであっても、日常の業務のなかでデジタル機器やサービスを使用する機会は増えており、そのシステムの裏側には、かならずコードが走っている。これらを有効に使いこなすためにも、リテラシーとしてのプログラミング知識があって困ることはない。

「ゲーム好きな子どもなので興味を持つかと思って」「IT人材が不足していると聞き、やっていて損はない」。プログラミング教室に子どもを通わせる親はこう言う。きっかけは親のすすめで習いはじめた子どもも、「今までただ遊ぶだけだったゲームを、自分で作れるようになるのは楽しい」と、率先して学んでいくケースが多い。

いきなり英語のコードを書かせるワケではない

プログラミングといっても、初心者にいきなり英語のコードを書かせるわけではない。Tech Kids Schoolの場合、使うのは「Scratch」(スクラッチ)と呼ばれる子ども向けのプログラミング学習アプリだ。マサチューセッツ工科大学のミッチェル・レズニック教授らが2006年に開発した。同教室オリジナルの『秘伝の書』をテキストに、カラフルなブロックを組み合わせてコードを作り、感覚的にプログラミングの基本を理解できる。

TechKids Schoolのテキスト『秘伝の書』。工夫次第で子どもでもちょっとしたゲームやアプリなどもつくれる

「子ども向けだから」と侮るなかれ。工夫次第では「スーパーファミコン」程度のゲームなら開発が可能だというから驚きだ。こうして「Scratch」でプログラミングの仕組みを学んだ子どもたちは、本格的なコードを書くWebやiPhoneアプリ開発コースへとステップアップしていく。

CA Tech Kidsの上野朝大代表は、子どもにプログラミングを学ばせるメリットについてこう語る。「今の子どもたちは、生まれたころからデジタル機器に囲まれている『デジタルネイティヴ世代』。ただ消費するだけでなく、仕組みを理解することが大事。プログラミングを習ったからと言ってプログラマーになる必要はない。バグを修正し、試行錯誤の末にものを作り上げる力は、どのような職に就いても役に立つはず」。

イギリスやオーストラリアをはじめとした欧米諸国では、プログラミングを義務教育に採り入れる動きすらあり、「プログラミングは、いずれ英語と並ぶグローバル人材の条件となる」(『5才からはじめるすくすくプログラミング』著者の橋爪香織氏)という見方もある。

母語を習うと同時にコードを学んだ子どもたちによって、未来のIT環境は想像できないくらい激変するかもしれず、グローバルな競争は激しくなる。IT化の波を受け、従来あったような職種がどんどんなくなっていく流れもある。「子どもが将来、職にあぶれないように」と切に願って、プログラミングを早めに身に付けさせようとする親の数はさらに増えるかもしれない。

(撮影:今井 康一)

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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