山陽新幹線、連結してみて何がわかったか JR西の事故復旧訓練で得られた"気づき"

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レールの交換作業は難航した

訓練の想定ケースは次のようなものだった。福岡県沖・玄界灘を震源とする地震に発生し、小倉―博多間を走行中の新幹線の先頭車両が脱線して停車。乗客の救護は終了し、設備や列車の復旧作業を行うという。

「訓練だから失敗してもいい。“気づき”を得て、それを職場に持ち帰って生かしてほしい」。朝10時、荻野浩平・新幹線管理本部長のこんな訓示で訓練はスタートした。

午前中は、折れたレールの交換、切断した架線の修復などが行われた。架線の復旧作業は特段の遅れもなく、スムーズに終了したが、折れたレールの交換作業は傍から見ても苦戦していた。どうやら、新しいレールの寸法が古いレールよりもわずかに長く、取り外して空いたスペースに差し込むことができないのだ。

この日は雲の多い天気だったが、日が差すにつれ、気温はじわじわと上昇した。そのため、レールの温度が上昇し、少し長くなってしまったのかもしれない。当初11時35分とされていた復旧見込み時刻は12時へと変更された。

レール交換のスタッフたちは、レールを強引に押し込むことを断念して、別の場所へと移動した。前後のレールの継ぎ目を数ミリずつずらすことで、スペースを広げる作戦だ。この方法が功を奏して、レール交換が無事終わった。終了時刻は当初予定どおりの11時35分だった。

台車の設置はうまくいったが…

午後から、500系新幹線と700系新幹線を用いた連結訓練が始まった。脱線したという想定の列車が500系。救援に駆けつけたという想定の列車が700系だ。どちらの車両も、先頭部にある連結器カバーが取り外された状態で停車している。

訓練の手順は、脱線した新幹線の最前部車両に搬送用の仮台車を設置して、走行できる状態にする。その列車を救援列車と連結させて、ほかの場所へ移動するという流れだ。搬送仮台車とは、小さな車輪のついた台車である。これを列車の車輪に取り付けて、低速で走行できるようにする。

まず、脱線したという想定の500系新幹線の車輪を油圧ジャッキで少しだけ浮かせて、搬送用台車を差し入れた。作業は慎重にゆっくりと行われたが、45分程度で終了した。ほぼ予定どおりに進んだようだ。

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