人間の生活は人工知能に脅かされるのか?

あらためて考える「人間ならではの特性」

人間は人工知能に負けるのか? 茂木健一郎さんに聞きます。
人工知能が再びブームになっている。「ディープラーニング」などの新しい技術によって飛躍的な発展が期待される一方で、人工知能が人間の知能を追い越すという事態に危機感を訴え、警鐘を鳴らす学者も現れた。
そこで先頃、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)を上梓した脳科学者の茂木健一郎氏に、来るべき人工知能時代を生き抜く術と、新ビジネスや新市場の可能性について聞いた。(聞き手:日本実業出版社編集部)

人工知能と人間の脳は“似て非なるもの”

──人工知能は本当に私たち人間を追い越すのでしょうか?

人工知能が人間の知能を追い越す「シンギュラリティ(技術的特異点)」は間違いなく起こるでしょう。30年後の2045年ごろという説が有力視されていますが、さらに早まる可能性も否定できません。ただしここで言う人工知能とは、いわゆるSFの世界に描かれるような、自らの感情や意識を持ち人類に対して反旗を翻す、というような存在ではありません。

確かに、学習予測やディープラーニングといった研究が、人間の脳の神経回路の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」からヒントを得て始まったのは事実です。しかし、現在研究され、発展が期待されている人工知能は、人間の脳を模倣するのではなく、むしろまったく異なるアプローチによるものだと言えます。

──人工知能と人間の脳とはまったくの別物ということですか?

そうですね。ですから、これからの人工知能は人間の脳とは無関係に進化していくでしょう。逆に言うと、私たちの脳が持っているいちばん大事な働きである意識や感情は、人工知能では実現できません。人間の知性や意識を置き換えるものではなく、いわば人間がやっていることの一部分を置き換えて、それを驚異的に進化させるのが人工知能なのです。

たとえば、人類最速のアスリートであるウサイン・ボルトが、リニアモーターカーと走って競争しても勝てませんよね。「走る」という点では一見、同じようでも、そもそも走る原理からして違うわけですから、比較すること自体がナンセンスだとも言えます。ただ、この例のように、人工知能が得意な部分では、人間は逆立ちしてもかなわないでしょう。

別の例で言えば、ベテラン寿司職人がマグロのよし悪しを長年のカンと経験で見極めるものを、人工知能は画像解析機能というまったく異なるアプローチによって、寿司職人よりもさらに精緻なレベルでマグロの鮮度を判断する、そんな違いだと考えてください。人工知能搭載の寿司職人ロボットが、本物の寿司職人を凌駕する日が来るかもしれません。

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