今の教育では30年後、「AIの支配」が免れない <動画>AIが描いた「奇抜な絵」に思うこと

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「すごい」「悪夢画像」「怖すぎる」など、さまざまな感想が飛び交う、グーグルのAI(人工知能)が描いた画像たち。確かに、どれも奇抜で独特の世界観です。芸術の分野でも、AIが人間を凌駕する時代が来るのか――。夏野剛氏は「すべては教育にかかっている」と指摘します。

 

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こちらがグーグルのAIが描いた画像のひとつ。動画内ではほかの画像も紹介しています(画像:Google Research Blog

皆さんはもうご覧になったでしょうか。グーグルのAIが描いたという絵。AIもここまで来たのか……と思いますよね。これ、サルバドール・ダリの絵とかに近い感じがしませんか。すごく写実的なところもあれば、すごく抽象的なところもあって、ワケの分からない世界観です。

人によってこれらの絵に対する反応はさまざまでしょうが、これ、「AIが描いた」と言われないで見たとしたら、皆さんは「人間の感性がない絵だ」って、言えるでしょうか。

ネット上では「やっぱりコンピューターが描いた絵だから、魂が入っていないね」とか、そういう意見を言う人もいますが、もし誰が書いたか伏せたまま出品されていたら、僕は本当に誰もAIだとは分からなかったのではないかと思います。「新しい種類の絵画の世界が開かれた」と、実際に思った方も多かったのではないでしょうか。

「2045年問題」が現実になるか、その分かれ目は?

この記事は週刊『夏野総研』とのコラボレーションでお届けします

言い換えれば、それくらいAIの知能は人間に近くなっているということ。「2045年問題」というものが指摘されていて、2045年には人工知能が人間の能力に勝って支配されるのではないかという話ですが、これがどうなるかは、人間のほうの教育体系をいかに整備するかにかかっていると思うのです。

僕は、もう人工知能でもああいう絵を描ける以上、イマジネーションの「想像力」、そしてクリエーションの「創造力」、その両面で人間の能力をもっと高めていく教育を目指すべきだと思っています。

知識の詰め込みや暗記はもう完全にコンピューターに負けているので、勝てる分野は、この2つのソウゾウ性(想像性と創造性)しかないのです。

この能力を引き上げられるような教育体系を今、いかに作るか。これがうまくいくかどうかが、2045年問題が現実のものとなるのか、それとも「やっぱり人間がつくるもののほうがイマジネーションとしてもリッチだな」と思える世界になるのか、分かれ目になると思います。

2045年まであと30年、われわれに課されたものは大きい。そしてそのほとんどが、教育システムの再構築に依存するということです。過去の延長上に未来はないと思います。

夏野 剛 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

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なつの・たけし

早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、08年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。


 

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