人間の生活は人工知能に脅かされるのか? あらためて考える「人間ならではの特性」

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──人工知能が新しい社会を生み出すと?

インターネットが一般的に普及するようになったのは、今から20年前のWindows 95の登場がきっかけだったと言われています。それ以前は、ネットなんてインチキだ、電子メールなど信用できない、ネットショッピングなんて誰が利用するんだ? などと言われたものです。でも、現実は皆さんもご承知のとおりで、ネットが当たり前の社会になりました。

その結果、ネット社会に対応できた企業と、できなかった企業の間には大きな差が生まれました。前述のブロガーに代表されるような、それまでは想像もできなかった新しい職業や新しいスターも登場しました。それと同じで、人工知能時代以前には誰も思いもつかなかったような、新しいビジネスや新しい職業が現れる可能性が非常に高いと思います。

今はまだ“夜明け前”ですが、インターネットにおけるWindows 95のような「黒船ショック」が起これば、世間の関心も一気に人工知能に流れていくでしょう。人工知能は仕事には使えないとか、ビジネスには関係ないなどといった議論は、おそらく10年後、20年後には、なぜそんなナンセンスな話をしていたんだろうって不思議に思うに違いありません。

人工知能の得意分野、不得意分野

──人工知能の得意・不得意な部分とはどんなものですか?

とにかく人工知能やコンピュータは、定型的なこと、定量化できてなおかつそのデータのサンプル数が多いことは得意中の得意です。ビッグデータがあれば、そこから瞬時に最適解を導き出すことができます。しかし逆に言えば、非定型的なこと、あいまいなこと、また、初めてのことは苦手です。将来の見取り図が読めない問題には対処できません。

それと、これは『人工知能に負けない脳』に詳しく書いていますが、人工知能は「身体性」の点ではまだまだ人間にかないません。身体性は、人間の独壇場なのです。もちろん技術の進展によって、将来、高い身体性を備えたロボットが登場する可能性はありますが、それが必ずしもヒューマノイド型でなければいけない必然性もありません。

──身体性を伴った人工知能ですか?

これは東大の松尾豊さんも言っていることですが、今後、来るであろう人工知能革命においては、クリス・アンダーソンの「メイカーズ革命」などにも象徴されるような製造業の分野が主流となり、そこでは日本の特に中小企業のお家芸ともいうべき卓越した職人技を備えた人工知能にスポットが当たるのではないか、という予想があります。

少し専門的になりますが、これは「動作」に必要な概念を人工知能がディープラーニングによって獲得するという考え方です。これは結局、現在の産業用ロボットに近いものであり、日本の得意分野とも言えるわけで、米国に大きく後れを取ってきた人工知能研究において、まだまだ日本にも逆転の目があるのではないか、という期待も出てきました。

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