貴志祐介氏に聞く「面白い小説を書くコツ」 小説を書くのに「文書読本」は役立たず

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小説のアイデアはどうやって生み出されるのか(写真 : Rawpixel / PIXTA)
「文章読本」の類いは役に立たないと言う。貴志流実践的な作法とは。「エンタテインメントの作り方」を書いた貴志祐介氏に聞いた。

 

──小説を書きたい人が増えているのですか。

ここ10年ぐらい、かつてないほど盛り上がっている気がする。ワープロで書け、ネット上で発表できるので、かなり執筆のハードルが下がったようだ。

初めての新聞小説。人の死なない作品にしたい

──ご自身は日本経済新聞夕刊に連載小説『擁壁の町』を掲載中ですね。

新聞小説というのは初めて。原稿渡しがギリギリになって、特に挿絵の浅賀行雄さんには絵を描く時間があまりなく迷惑をかけている。完結は年末になりそうだ。

掲載が夕刊なので読者の家族も読む。ファミリーで楽しく読める内容となると、きついホラーはやりにくい。ガチガチの謎解きでは説明が延々となり、毎回の新聞掲載の長さではぶち切られて、何が何だかわからなくなってしまう。本格ミステリも難しい。サスペンスかユーモアのかかった群像劇か、結局後者に落ち着いた。

──芸域を広げようと?

今まで人の死なない小説を一作も書いていない。死に方もみな殺されている。今回はどうするか。殺さないつもりでいる。ただ、作劇の都合上、これから殺さなければならなくなるかもしれない。手の内をばらすようだが、できれば終わったときに登場人物がみな生きていてもらいたいと思う。

──エンタテインメント(エンタメ)は総合格闘技なのですか。

以前は本来の格闘技においても、エンタテインメントにおいても、得意技が一つあると成功した。今はそれではなかなか勝ち抜いてはいけない。エンタメで言えば本格ミステリがいい例で、昔は新しいトリックを1本中心に据えたら、それで一応一編が完結する。ところが、今や抜本的に新しいトリックはなかなか見つからない。となると、料理の仕方、つまり何かのほかの要素をプラスする。恋愛や社会的な告発などといったものをからめ、トータルで読者の満足をうることになる。

──SF(サイエンス・フィクション)は荒唐無稽でもいいのでは。

ミステリとは手法であり、ミステリ的な手法で書かれた小説のこと。一方SFはテーマ、SF的なテーマを主眼に書かれた小説がSF。基準が違う。だから、SFは一作一作書き方が違っていてもおかしくない。ミステリみたいに書かれたSFもあるし、ホラーみたいなSF、哲学小説みたいなSFもありだ。

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