「20世紀のエンターテインメント産業がヒットで成り立っていたなら、21世紀にはニッチで成り立つようになるだろう」。
2006年、当時『ワイアード』誌の編集者だったクリス・アンダーソンの著書、『ロングテール』にある言葉だ。この言葉を聞けば、前回、前々回まで、少数精鋭のブロックバスター(メガヒット)とスーパースターに勝負をかけるという著者のアドバイスは時代遅れで浅はかだ――と、思われるかもしれない。
ベストセラーになった彼の著書『ロングテール』によれば、自分の好みにぴったり合った商品を見つけて入手できるならば、消費者はヒット商品からそちらに乗り換える。よって、賢明な企業はブロックバスターに頼らずに、「ロングテール」による利益を重視するようになる。ロングテールとはつまり、実店舗のチャネルで提供すると採算が合わない、ニッチ向けにオンラインで提供する商品のことだ。
ロングテールの基本原則とは?
アンダーソンは、「ニッチに取り組む方法を見つけた企業が繁栄する」と明言する。この考えは多くの業界で受け入れられた。たとえば、当時グーグルのCEOだったエリック・シュミットは、アンダーソンの信念は「グーグルの戦略的思考の深い部分に大きな影響を与えた」と『ロングテール』の帯で述べている。
アナリストや業界観測筋に対して、ネットフリックスなど、いくつかの企業は自らをロングテール企業だと誇らしげに称した。
ロングテールの基本原則を復習しよう。ある分野(たとえばレコード、書籍、ビデオなど)で販売可能な全商品を販売数量順に示したグラフだ。
網かけ部分がロングテールを表す。これはつまり、オンラインで購入できるが、ごく少数しか売れないので、リアル店舗やその他アナログ・チャネルで販売しても採算が取れない商品のことを指す。
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