2011年、100万ダウンロードを記録した曲は102曲あり、販売総数の15%を占めた。その年にダウンロードされた800万曲のうちの0.001パーセント(決して入力ミスではない)が、販売総数のおよそ6分の1を生み出したことになる。
曲線のヘッドに当たるこの少数のブロックバスターの重要性は、強調してもしすぎることはないだろう。この傾向は、ヒット作品の意義が高まっていることを示すものだ。2007年、100万ダウンロードを越えたのは36曲で、販売総数の7%を占めた。2009年、100万ダウンロードに達したのは79曲で、販売数の12%を占めた。
このような市場の集中度は驚くほど激しいので、需要曲線を描こうと思ってもほとんど不可能だ。グラフの軸とすっかり重なってしまうからだ。別の方法でこの販売分布を描いて、人気度の異なる曲が市場販売全体にどのように貢献しているか、次のグラフで示した。
上位のわずかな曲が販売数のかなりの割合に貢献し、下位の多くの曲がほとんど貢献していないことが見て取れて愕然とする。
これが、デジタル市場の現実だ。品揃えはどんどん増えるかもしれないが、最上位のごく少数の曲の重要性が高まる一方なのに対して、最下位の曲の平均販売数は低下していく。同じパターンがアルバムの販売にも見られる。
ロングテール信奉者、エリック・シュミットの転向
再生音楽の統計は偶然ではない。ビデオのレンタルや販売など、ほかの分野で実施した調査でも同じパターンが示される。
私たちは現在、ロングテールへの移行ではなく、一部のデジタル・エンターテインメント商品に加速度的に集中する様を目の当たりにしているところだ。グラフが示すように、エンターテインメント業界は以前にも増して独り勝ちの様相を呈している。
驚いたことに、エリック・シュミットもロングテールについて考えを変えたようだ。ロングテールを支持してからわずか2年後に、シュミットは次のように述べた。
「われわれはロングテールを気に入っているが、わが社の収益のほとんどはヘッドからあがる」「インターネットはむしろ、これまで以上に大がかりなブロックバスターやブランドの集中化を招くことになるだろう。人がたくさん集まれば、やはりスーパースターが欲しくなるものだ。今の時代、スーパースターは米国にとどまらず、世界のスーパースターになる。つまり、世界的なブランド、世界的な企業、世界的なスポーツ選手、世界的な有名人ということだ」
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