注目浴びる「路面電車」、実は非効率だった! 全国のLRT導入ムードに暗雲も

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旅客の乗り降りに時間を要しているからと多くの人は考えるかもしれない。乗降時間短縮のため、停留場に乗車券の券売機を置くなどして、車内での運賃支払いの時間を省く「信用乗車方式」を勧める向きもある。

信号待ちがかなり多い

しかし、国土交通省中国運輸局が2005年3月に発表した「路面電車のLRT化を中心とした公共交通体系の再構築の検討調査報告書」によると、広島電鉄の全路線平均運行時間のうち、走行時間は54.0パーセント、信号待ちは30.8パーセント、乗降は11.9パーセント、前を行く列車などを待つ時間は3.3パーセントであったという。特に、交差点で路面電車が左折または右折すると、表定速度を大きく落とすことが判明している。

スピードアップのためには列車が近づくと信号が青に変わるような方策が考えられるものの、他の交通との兼ね合いから完全には実施できない。結局のところ、道路上を走らないようにすれば解決するのだ。

続いては安全性を見てみよう。表2は列車キロと事故件数とによって事故1件当たりの列車キロを求めたものだ。2012年度の結果はご覧のとおりで、事故1件当たりの列車キロは路面電車が33万2847キロメートルに対し、新交通システム、モノレールでは事故そのものが起きていない。さらには、JR旅客会社や大手民鉄、地下鉄と比べても事故が起きる頻度は高いと言える。

路面電車の事故で最も多いのは、道路上の車両や歩行者と衝突または接触する道路障害事故だ。事故全体の77.7パーセントを占める56件が発生しており、解決策としてはやはり道路上を走らないようにするほかない。

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