「マツコ×夜の巷」がここまで人気になる理由 テレ朝の深夜番組がトヨタ社長も呼び寄せた

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すっかりやられていたのが、トヨタ自動車の豊田章男社長だ。10月1日に放送された「夜の巷を徘徊する 3時間特番」ではマツコたっての希望ということで、愛知県豊田市にあるトヨタの工場を見学する企画だったが、これになんと豊田社長が登場した。

社長自らエスコート

豊田社長は自ら、愛車である世界に500台しかないスーパーカー「レクサスLFA」でマツコをお出迎えし、さらには記念館でトヨタの歴史や創業者の苦労話を語り、工場内をエスコート。最後に、手作業のため、1日3台しか作れない水素を燃料とする燃料電池車「MIRAI」(ミライ)に、これまた豊田社長の運転で試乗するなど、至れり尽くせりのおもてなしだった。

レクサスLFAに乗れば、「エンジン音が違う」、MIRAIに乗れば「すごい! すごい!」とはしゃぐマツコ。いつもはドレッシーな服装のマツコが、特大の作業着に作業帽をしている姿が映っているだけでも、絵的なインパクトは大きかった。そりゃ視聴率も取れるはずだ。社長だけでなく、社員食堂では従業員と世間話をして交流するなど、垣根のないマツコにトヨタの社長以下全員メロメロだった。

マツコといえばTBS系の「マツコの知らない世界」(毎週火曜よる9時放送)で紹介されたさまざまな食材をマツコが食べ、ひとたび「おいしい」と言うだけで、お取り寄せ殺到、売り切れ続出になる現象が続くほど、影響力がある。今回の企画、トヨタにとってもいい宣伝になったのではないだろうか。少なくとも、マツコにフレンドリーに接する豊田社長の好感度は上がったに違いない。

この日はほかに、マツコが人生で初めて東京ディズニーシーを体験する企画もあったが、こちらも、来園客の邪魔にならないように気遣うマツコが印象に残った。というわけで、今回の3時間特番はとても面白かったのだが、見方を変えてみると、このつくりだと、ともすれば企業PRのように取られかねないというきらいはある。たとえば、マツコはトヨタのテレビCMに出演していた実績もある。

テレ朝お得意の深夜でヒットした番組を、ゴールデンに移動するようなことはせず、当初のコンセプトどおり、深夜枠のままでマツコが街を彷徨う地味な番組のほうが、結局は末永く続くかもしれない。あの「タモリ倶楽部」のように。

桧山 珠美 フリーライター

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ひやま たまみ / Hiyama Tamami

フリーライター。月刊GALAC「今月のダラクシー賞」、日刊ゲンダイ「これだけは言わせてくれ」、読売新聞「アンテナ」などでテレビコラムを連載。

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