なぜ病んだわが子を「殺して」と懇願するのか

身内の厄介なものを排除しようとする親たち

筆者は「子供部屋に入るのが怖い…を放置していると時とともに解決が難しさを増していく」と語る(写真:wavebreakmedia / PIXTA)

 本書『「子供を殺してください」という親たち』は、精神を病んだ人を説得し医療につなげる「精神障害者移送サービス」に従事する著者、押川剛氏がまとめた本だ。

生命の危険を伴う仕事であろうことは想像に難くないが、全体の半分以上をしめる、第1章「ドキュメント」では、想像をはるかに上回る壮絶な事例が多数紹介されている。その文章は、第三者によって安全な所から書かれたものとは違い、対象者の回復を願い行動を共にしている著者の目線で書かれたものだ。だから、読者は冒頭からグングン引き込まれていく。後述するが、私にとってこの第1章は、親として得たものが非常に多かった。

退院を促す施策によって……

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第2章以降は、精神保健分野の問題点について、法制度の面もふまえ解説し、提言している。これを読むとわが身の危険を感じ、背筋が寒くなる。危険を抱えた人が、長期入院を減らす国の施策によって退院を促され、市中に増える傾向にあるという。他人事ではない。すぐ身近に危険は迫っているのだ。

私が本書を初めて読んだ8月以降、注意してニュースを見るようになったからかもしれないが、著者が危惧するタイプの犯罪が目に見えて増えているように感じられる。否応なく、危機感が募った。

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