今回のコラムも特別編です。前回の記事で議論した「絶歌」に加え、事件の2年後に出版された”元少年A”(以下A)の両親の手記である「『少年A』この子を生んで・・・・・・」を再読した感想を元にして、凶悪少年犯罪が生じる家庭環境について一緒に考えたいと思います。
Aとその両親の手記双方を突き合わせて読むことで見えることは、子供に安心感を与えることの大切さ、愛情が子供に誤解されるリスクの大きさ、また子供を過信せず、異変のサインを見逃さない距離で子供を見守ることの大切さです。
Aの両親の言い分では「しつけは厳しくなかった」
Aの家庭は一見、平凡な家庭であり、ご両親はAをきちんとしつけ、愛情を注いだと思っているようです。
「死んでお詫びする勇気もない自分たちをお許し下さい」と手記に書かれていますが、行間からは「もし死を選ぶとしても、Aと自分たちが(許されなくとも)直接遺族に謝ってからにしよう、下の二人の息子たちを育てたあとにしよう」と考えているように推察できました。
Aの家庭は一見、平凡などこにでもある家庭に思えます。父親は、「うちは金持ちやないけど、貧乏でもない。ほんま、平凡やなあ」が口癖の、無口で子煩悩な人です。Aとの会話はスムーズではありませんが、思春期はそんなものだろうと受け止め、節目節目には息子にキチンと助言や話しかけをし、育児のすべてを妻に丸投げした人ではありません。
母親は最初の男の子にあたるAの誕生を親戚ともども大喜びし、離乳食もすべて手製で、丁寧に子育てをしました。ただとても几帳面な性格で、物事の白黒をはっきりさせないと気が済まないタイプです。幼児期より食後の食器の下げ方や敬語の使い方など、早期からかなり厳格に教育した人でした。
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