JTが三たび大型買収、「6000億円」は妥当か 縮小市場での巨額買収に疑問の声も

拡大
縮小

ただし海外市場も安泰とは言えない。JTにとって、海外主要市場であるロシアなどでは規制強化が響き、日本より急速に市場縮小が進んでいるからだ。足元は値上げで増収増益を確保するが、持続的成長には黄信号が灯る。

たばこ一本足経営脱却へ、JTは1985年の民営化以降、飲料や加工食品、医薬事業に参入し、多角化した。しかし飲料と医薬は赤字続きで、加工食品の利益は全体の1%に満たない。今年2月には飲料事業撤退を発表、自販機事業をサントリー食品インターナショナルに売却した。

八方ふさがりのJTに残った道は、結局、たばこ事業に落ち着きつつある。たばこは広告宣伝や販売促進に関する規制が厳しく、新たなブランド立ち上げは難しいため、成熟市場で売り上げを伸ばすには、名の知れたブランドを買うほかない。そこでアメスピに白羽の矢が立ったようだ。

「JTのグローバル化の特徴の一つは、時間を買うM&A」。過去2件の大型買収に携わった新貝康司副社長は、自著『JTのM&A』(日経BP)でそう語る。今回JTが買った時間は、その高額に見合うものとなるか。市場からの疑問を払拭するには、早く成果を出すしかない。

「週刊東洋経済」2015年10月10日号<5日発売>「核心リポート04」を転載)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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