3男1女の「元モデル母」が拓いた再就職への道 子だくさんワーキングマザーの仕事論<5>

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「あんなに仕事好きだったのに、子育てのほうが楽しくなってしまったんです。仕事は完全燃焼。これからは子育てに比重を置こうと、モデルママ仲間と気楽なプチ起業感覚で、セミナー講師の仕事を始めました」

これが、現在の講師業につながる伏線となる。見せ方のプロであるモデルの知識とノウハウを活かし、就職活動中の学生や新社会人向けのセミナーを行った。その際、”顔立ちはきれいだけど何か光っていない人”がいるのを見て、人は心の曇りが表情に表れることに気づく。「教えること」や「人の心理」について、いつか専門的に勉強したいという思いを抱く。

35歳できっぱり専業主婦に

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新たに力を入れたい分野がみつかった。しかし、35歳で第4子を妊娠。子どもの命を守るため、今度はモデルも講師もきっぱり引退。以降、15年間の専業主婦生活に突入する。女性はライフイベントでキャリアの中断を余儀なくされる、とはよく耳にする言葉だが、山下さんの中には「余儀なく中断された」というネガティブな気持ちはみじんもない。

「やりたいことを十分やってきているので、悔いがないんですよね。今度は家事や子育てを楽しもうと。子どもに冷凍食品を食べさせたくないから手作りしたり、家庭菜園でトマトを育てたり、パンを焼くのも楽しかった」

今、目の前にあることを楽しむのが山下さんのスタンス。二男が英語を習い始めたのを機に、36歳から国際交流のボランティアも開始。専業主婦でありながらも、社会との接点をもった。

それから10年後の46歳。いちばん下の娘が小学校4年生になったのを見計らい「いよいよ時が来た」と、大学の入学願書を取り寄せる。社会人特別入試を受けて、聖徳大学人文学部心理学科(現・心理・福祉学部)に入学。4年間心理学を学ぶ。

心理学を専攻した理由は、友人とセミナー講師の仕事をしていたときから、人は心の悩みを取り除くことで表情が変わると感じていたこと、4人の子育て中に「同じ年頃に、同じ問題が起きる」ことに気づき、児童の発達心理学に関心を持ったことからだ。

40代からの学び直しは人生の後半を充実させる。しかしこの世代は同時に親の介護も生じやすい年代だ。山下さんも、大学在学中に母の介護に直面した。週の前半は倒れた母の介護のため富山で過ごし、後半は戻って大学へ。下の娘が一人になる時間を作らないよう、富山に転校させ親戚の家に預ける二重生活が始まった。

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