決裂したTPP、次に大筋合意したら起きること 農業へのダメージ、消費者が受ける恩恵は?

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関税で守られてきたコメはむしろ衰退の道をたどった(写真:kitasan/PIXTA)

結局、内向きの議論で終わってしまうのか──。大筋合意を目指して7月末に開催された、TPP(環太平洋経済連携協定)の閣僚会合は物別れに終わった。

関税の撤廃など自由貿易に関しては、150カ国超が加盟するWTO(世界貿易機関)が、グローバルなルール作りを目指してきたものの、まとまらず。代わりに少数国間でFTA(自由貿易協定)を結ぶ傾向が強まっていた。

TPPは2006年に発効した、シンガポール、ニュージーランドなど、4カ国の「P4協定」が原型だ。2010年から米国、豪州などが加わり、TPPへと発展。日本は2013年7月、最後発の12カ国目として、交渉に参加した。

いわばTPPとは、参加国のGDP(国内総生産)が世界の4割弱を占める、メガFTAである。AIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立、アジアで主導権を握ろうとする中国を牽制する意味でも、合意が期待されていた。

5年間を超える交渉の末、最後になるはずだった会合がなぜ、決裂したのか。

「某国はいろいろ過大な要求をしてくる」。甘利明TPP担当相の批判の矛先はニュージーランド(NZ)に向かった。同国のティム・グローサー貿易担当相との交渉で、「本当にまとめる気があるのか」と甘利氏が声を荒らげる場面もあったとされる。

誤算だったNZの先鋭化

NZの狙いは何より、日本や米国への「乳製品」の輸出拡大だ。国内市場が小さいNZは、牛乳生産の95%を乳製品として世界に輸出。酪農が国を支え、TPPで得られるメリットも乳製品輸出にほぼ限られることから、要求が先鋭化した。日本もある程度の輸入枠を設定する方針だったが、NZの要求はそれを大きく上回るものだった。

対する日本は、酪農家を保護するために、乳製品、特にバターには、従価税換算で360%の高い関税をかけている。輸入も国が制限し、最近ではバター不足が問題化するなど、改善すべき点は多い。

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