現在、中国は経済的および軍事的な拡大を続けている。米国は、これをできる限りの冷静さで受け入れるべきだ。まず米国が受け入れなければならない苦痛に満ちた現実は、アジア太平洋地域において、パワーバランスの大変動がすでに起きた、ということだ。すでに、米国が比類ない優位性と一方的にルールを決める力を持った時代は去ったのである。
中国によるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立は、その好例だ。米国の反対にもかかわらず、アジアの多くの国々はAIIB支持に回った。人民元が国際通貨基金(IMF)の準備通貨バスケットに加わるのも不可避だと思われる。
それどころか米国主導の取り組みは難航している。米国は、中国を除外した環太平洋経済連携協定(TPP)の締結に向けて、大きな困難に直面している。
米国のアジアででの役割に変化
軍事的には、米国は将来も支配的なグローバルパワーであり続けるが、東アジアでの絶対的な優位性は揺るぎないものとはいえない。中国の軍事的(特に海軍の)能力の劇的増強は、貿易に多大に依存している地域の超大国になることを予想させるものだ。米国首脳の大半は、自国がもはや空と海を独占できないとの見通しを非公式に認めている。米国の役割はアジア地域における中国の対抗勢力であることに後退するだろう。
こうした中、南シナ海に関して、米国はどのようにして冷静さを維持するべきだろうか。中国の習近平国家主席の訪米を9月に控え、これは最もデリケートな地政学的問題である。これまでに、中国はファイアリー・クロス礁などで、拡張的な領有権の主張と大規模な埋め立てを行い、アジア地域と米国の忍耐の限界を試してきた。
国際法に基づけば中国に非はない。問題の海域や海域内の島々に対する領有権がなくても、周囲の礁や浅瀬に人工島や滑走路を含む施設を建設する権利を持っている。実際、フィリピン、ベトナム、マレーシアは長年、スプラトリー(南沙)諸島でそうしてきたのである。こうした設備は「平和目的」のためでなければならないが、その意向が攻撃的なものでない限りは、軍事的なものを必ずしも除外しない。
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