東京メトロの安全は、あのiPadが守っている 電子化が進むトンネルカルテとは?

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運行を止めることなく点検・修繕ができる秘密は?(写真 : Ai-Tak / PIXTA)

東京の交通の要として知られる地下鉄のネットワーク。東京メトロは、195.1kmにも及ぶ各路線で、365日休むことなく運行を続けながら、路線の精密な管理を行ってきた。

そこに導入された新たなデバイスはiPad AirとiPad Air 2だ。東京メトロのトンネル管理や修繕の場面で、膨大な量の紙を廃し、分析の効率化に寄与する活用について、東京地下鉄株式会社鉄道本部工務部土木課を取材した。

運行を止めずに安全を管理する

東京メトロは、世界でも希有な存在といえる。安全運行のためには線路やトンネル、さまざまな設備の日々の点検と修繕などが欠かせないが、そのために列車の運行を止めることをしないからだ。

筆者が住む米国サンフランシスコ周辺には、湾岸地域を取り囲むBARTと呼ばれる高速鉄道がある。サンフランシスコと対岸の港湾都市オークランドの間には、湾をくぐる長いトンネル区間が存在する。
8月はじめの週末の2日間、集中工事のためこの区間の列車の運行をやめたため、普段行き来できるはずのサンフランシスコ・オークランド間の移動ができなくなってしまった。そのため、車やバスなどの代替手段を使わなければならなかった。ちなみに、9月最初の週末の3日間も、同様の運行停止が予定されている。

東京メトロは、こうした運行停止による工事を避けている。しかし線路やトンネルの安全な点検や修繕も行う。これが世界に誇れる鉄道屋としての誇りなのだという。

では、いつ点検や工事を行うのか? それは運行が終わった後の深夜時間帯だ。しかし、毎日終電後、翌日の運行のために準備を行うまでの時間はせいぜい1~2時間程度しかない。

そうしたなかで、全線について、1カ月に3回の線路の検査と、2年に1回のトンネル検査(通常全般検査)、20年に1回の詳細なトンネル検査(特別全般検査)をこなしていかなければならない。これらは法令で定められた必須の検査であり、それ以外にも修繕なども行う必要がある。
とにかく、時間がないのだ。そこで工夫が必要になる。

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