ギリシャはユーロ圏に残ってよかったのか

永遠の割高通貨と半永久的な締め付け

世界の金融市場を翻弄したギリシャのチプラス首相(© European Union, 2015)

ギリシャ危機をめぐる混乱はとりあえず収束した。7月13日のユーロ圏首脳合意を経て第3次金融支援820~860億ユーロのメドが立ち、16日には欧州金融安定メカニズム(EFSM)を使用したつなぎ融資70億ユーロの合意も得られた。これにより、懸案だった 7月20日のECB(欧州中央銀行)への国債償還(35億ユーロ)は難なく通過。金融市場の関心はすでにFRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げ開始時期に集中している。

合意を境としてユーロ相場が軟化したのは、安心して投機的なユーロ売りを仕掛けやすくなったことに起因するものだろう。逆に、ギリシャ情勢が混沌としている中でユーロ相場が底堅かったのはそのような投機的な売り持ちが解消されたことに起因していた。

とはいえ、これでギリシャとEU(欧州連合)の問題は万事解決ではない。国民投票に諮った緊縮案よりも厳格な案を飲んだことにより当面のギリシャ政局が流動化しかねないという目先の不安はあるが、ここで取り上げたいのは、もっと大局的な話である。

次のチャンスはない

最低でも第3次金融支援の想定する今後 3年間に関しては再び、EUとギリシャは「監視する側」と「監視される側」の関係を続けることになる。ギリシャ国民からすれば「締め付ける側」と「締め付けられる側」の関係を続けることでもある。しかも、締め付け度合いは従前よりも厳しくなる。

銀行預金の出し入れまで制限される事態に至ったことで、「国民も事の重大さを認識し、今度は真摯に改革にいそしむはず」という性善説に立つこともできるが、合意後、チプラス政権の変節に怒りを覚えた一部市民が暴徒化し、それを鎮圧するために機動隊が催涙弾を発射する光景などを見るにつけ、あまりいい予感はしない。

恐らく、次に同様の騒動が起きた場合、今度こそドイツがいうような「5年間のユーロ一時離脱」やそれに類似した案が幅を利かせる可能性が高い。第3次金融支援では総額550億ユーロのvaluable assets(価値ある資産)が民営化基金に移管され、その基金が EUの監視下に置かれるため、債権者(特にドイツ)側からすれば「取りっぱぐれることはない」という思いがありそうである。

しかし、本当に valuable assetsを根こそぎ持っていかれ、あげくに通貨ユーロも奪われた場合に、ギリシャには何も残らない。それほど一方的な蹂躙が EU域内で起こる可能性は高くはないが、少なくとも第3次金融支援に組み込まれた以上、「宿題」がこなせなかった時に訪れる結末はそれに近い、かなり悲惨なものになるだろう。

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