「就活時期繰り下げ」で見落とされている本質 学生と企業はいつまで就職ナビに頼るのか

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バブル経済崩壊後、「就職氷河期」といわれる時代を経て、2006年卒から数年は売り手市場に転じ、求人倍率は1.6倍を超えピーク時は2.14倍。ところが、リーマン・ショック後は再び低迷し1.2倍台にまで落ちた。これらの変化を踏まえてみても、今年の1.73倍はここ10年の中でも高い水準だといえるだろう。

では、どのような業界・企業が内定を出しているのか。フライングは外資系企業やベンチャー企業が行っているかのような印 象があることだろう。網羅的に調査したわけではないが、大学のキャリアセンターや、学生にヒアリングをしたかぎりでは、そうでもない。

6月末時点までの結果でみると、中堅・中小もそうだが、大手・準大手といえる規模の企業も内定を出している。サービス業の名前をよく聞くこと、逆に国内の金融機関の名前はほぼ聞かないことが特徴と言えば特徴だ。

もっとも「内定」などと言う言い方をしないものの、明らかにそれをちらつかせたアプローチ、そもそも「面接」ではなく「面談」と呼ぶなど、グレーな臭いがする活動は行われている。

経団連に加盟している上、遵守の姿勢を見せる企業においても8月1日は選考開始ではなく、内定通知の日と捉えている企業も存在し、混乱している。

もっとも、この数字は毎年、就活が本格化する前の春に行っている調査であり、推測値だ。最終的に就職した者の数などは、文部科学省の「学校基本調査」などを見なくてはわからない。

たとえば、2009年卒は2.14倍というバブル期並みの高い数字となったが、秋に起きたリーマン・ショックで混乱したし、2010年卒も求人倍率自体は1.62倍と高い値を示したものの、「学校基本調査」でみた就職者数などはここ数年の中で最低の値となった。あくまで、目安の数字ではある。ただ、昨年同様の回復傾向を見せており、1.73倍の今年は、売り手市場とみていいだろう。

売り手市場が膨張

実態はと言うと、就活時期繰り下げによる混乱の中、内定辞退を恐れるあまり、かなり多く内定が出されているという印象である。売り手市場がさらに膨張しているかのように見える。学生が何社内定を持っているかというデータは各就職情報会社からはまだ開示されていないが、中堅クラスの大学の学生でも現時点で数社の内定を持っているのが実態だ。

実際、どれくらいの学生が内定を持っているのだろうか。新卒向け就職ナビサイト「リクナビ」を運営する株式会社リクルートキャリアの研究機関・就職みらい研究所が発表した「2015年6月度 就職内定状況(2016年卒)」【確報版】によると、6月1日時点での就職内定率は34.5%だった。就活をしている学生の約3分の1が内定を持っていることになる。

言うまでもなく、経団連の「採用選考に関する指針(通称:指針)」の定めた時期よりも早期に内定が出ていることになる。もうすぐ7月1日時点でのデータも発表されるが、その際には5割前後となっていてもおかしくないだろう。

いくつかの大学にヒアリングしてみたが、大学のランク、地域により差はあるものの、多くの大学は6月1日時点で3割強程度の学生が内定を持っている状態だった。大学教職員の体感値と、この調査は近いといえるだろう。就活時期繰り下げといいつつ、これほど早く内定が出ている年も珍しい。前出のリクルートキャリアのデータを参照しつつ考えよう。

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