「データ重視」の仕事に潜むこれだけのワナ 「デザイン的思考」を岩佐十良氏に聞く

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新潟県大沢山温泉にライフスタイル提案型の宿泊施設「里山十帖」を経営する岩佐十良氏(左)と常見陽平(右)
「デザイン的思考」「デザインエンジニアリング」などと呼ばれるコンセプトをご存知だろうか? ICTが進化し続け、スマホやタブレットだけでなくスマートウォッチなどのデバイスも普及しつつあり、ビッグデータの活用なども話題となる2015年だが、このアナログなコンセプトに注目が集まっている。それは「現状の閉塞感を打破するための思考アプローチ法」ともいえるものだ。
この5月にはコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが、デザイン会社LUNARを買収した。ビジネスオピニオン誌『一橋ビジネスレビュー』(東洋経済新報社)も「デザインエンジニアリング」特集を組んだ。ダイソン、アップルなどデザインが優れていて、しかもそこに思想が感じられ、一体感があるプロダクトを世に出す企業が注目を集めている。
今回は、この常識を超えたイノベーションを生む、事業計画書では語られない、「デザイン的思考」という新たな思考法を実践している自遊人代表の岩佐十良氏のインタビューをお届けする。
『自遊人』の発行で知られる岩佐氏は、2014年5月に新潟県大沢山温泉にライフスタイル提案型の宿泊施設「里山十帖」を開業した。「従来のデータでは、宿の成功は100%ありえない」と言われた地域で、開業後わずか3カ月で客室稼働率9割を超えることに成功した。「グッドデザイン賞ベスト100」「ものづくり大賞」をW受賞している。そのストーリーをまとめた著書『里山を創生する「デザイン的思考」』(KADOKAWA)も話題となっている。
「デザイン的思考」をビジネスに生かすにはどうすればいいだろうか。参考になるはずだ。

ビッグデータの時代だからこそ

常見陽平(以下、常見):岩佐さんの著書『里山を創生する「デザイン的思考」』(KADOKAWA)を読みました。まさにプロジェクトストーリー、ビジネス・ケースであり、メソッドを惜しげもなく開示していますね。

岩佐十良(以下、岩佐):ありがとうございます。

常見:岩佐さんのいう「デザイン的思考」は、まだ用語として定義が完全には確立していないと思うのですが、「現状の閉塞感を打破するための思考アプローチ法」というのはわかりやすいです。そもそもデザインというのは、図形や、何かアウトプットされたものではなく、本来は問題解決や目的達成のプロセスを指しますからね。

さて、近年は「ビッグデータ」が注目されていますが、岩佐さんはこのような流れに懐疑的みたいですね。

岩佐:活用の仕方によっては、そういったマーケティングデータも役立つと思います。ただ、僕が実践している「デザイン的思考」で企画を考えるとき、初期段階では白書もデータも見ることはありません。

常見:岩佐さんは、これまで雑誌『自遊人』や南魚沼市の宿「里山十帖」のプロデュースを成功に導きました。失礼ですが、雑誌も宿も今の時代、決して儲かる仕事ではないと思います。だからこそ、データを活用しろという世の中なわけですが、岩佐さんはその逆のことを言っているように思います。

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