「就活時期繰り下げ」で見落とされている本質 学生と企業はいつまで就職ナビに頼るのか

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それでも、学生は就職ナビに満足していない。連合が7月2日に発表した「インターネットを使った就職活動に関する調査」が興味深い。これは2015年6月9日〜17日の9日間に、就職活動を行っている(または終えた)大学4年生500名、今年4月に社会人になった1年生500名の合計1000名の有効サンプルをもとにしたものである。

学生の就職ナビに対する意見とは

これによると、「就職情報サイトに公開して欲しい情報」として就活生の48.1%、つまり半数近くが「過去3年間の離職率数」の希望していることが明らかになった。しかし、就活生の90.3%、つまり9割以上がその情報を得られていない。

この知りたい情報と、実際に知ることができた情報のギャップにおいては、「前年度の所定外労働時間(残業や休日出勤)の実績」(32.8%の学生が知りたいと思っているが、知ることができた学生は7.4%)、「将来の年収(30歳や40歳の社員の平均年収)」(28.8%の学生が知りたいと思っているが、知ることができた学生は4.2%)などで顕著となっている。

もちろん、これらの情報を就職ナビに期待するのは無理だという考え方もあるだろう。所詮、就職ナビは広告であり、企業からおカネをもらって運営されている。また、3年以内離職率というのも単純に数字だけを見ても判断できないものではある。なぜ離職したのかという理由が問われるからである。とはいえ、学生が知りたいことに、就職ナビが対応しきれていないということもまた事実だろう。

ほかにも「必要なメールが埋もれる」「必要な情報の取捨選択が難しい」「興味のある企業がブラック企業では」「エントリー数が少ないのでは」などと不満や不安が渦巻いている。

一方、「就職活動に就職情報サイトは必要」と答えた大学4年生は 82.8%に達しているし、79.4%の学生は「効率よく就活関連の情報が収集できる」と評価している。就職ナビの掲載社数は過去最高レベルに達しつつも、そして学生は一定の存在意義を見いだしつつも、不満を抱えつつ利用しているのだ。

就職ナビの掲載件数が過去最高レベルに達する中、企業と学生との接点は脱ナビ化を目指すという奇妙な現象を示している。それは、企業と学生のつながりの再構築である。

ここ数年の、採用担当者、大学キャリアセンター関係者の論点と言えば、脱就職ナビだ。かつて就職ナビは希望だった。居ながらにして求人情報を検索できるし、応募や進捗管理などはこれを通じて行うことができる。もともとは、学生も企業も就活・採用活動により集中できるツールのはずだった。

しかし、誰でも自由に応募ができるようになり、応募数が肥大化した。結果として、学生も企業も手間が増え、出会えそうで、出会えない状態になった。

就活時期繰り下げと相まって、私は脱就職ナビが進んだと解釈している。なんせ、就職ナビは経団連の指針に合わせて3月1日にオープンする。社会の公器だからである。

ただ、今年度で言うなら、経団連加盟の大手企業を含め、3月1日より前に自社の就職サイトを立ち上げている企業が散見された。応募は受け付けないものの、情報を開示するのである。ほかにもインターンシップのサイトを、本選考用なみの充実したものにし、情報提供を行うなどの取り組みが見られた。

企業も学内セミナーなどをより重視するようになったし、上位校を中心にリクルーター制度を敷き、至近距離でのアプローチをするようになっている。インターンシップ強化の動きも、上位校の学生に早期からアプローチし、至近距離で接点を持てるからである。

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