ヤマダ電機とビックカメラを分析する 50店以上大量閉店、追い込まれるヤマダ電機

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純利益の向上が急務ですが、キーワードは、「ROE」(株主資本利益率)だと考えられます。まず、貸借対照表(5~6ページ)を見てください。注目したいのは純資産の額です。前の期は5533億円あったのが、この期は5093億円まで減っていますね。かなり大幅な減少です。

何が減っているのかというと、「自己株式」です。前の期はマイナス383億円、この期はマイナス883億円まで膨らんでいます。自己株式を取得すると、株主資本のマイナスという形で計上されます。

外国人持ち株比率が高いがヤマダのROEは1.8%

なぜ、積極的に自己株式を取得しているのでしょうか。もちろん、自己株式を取得すると、株式を買うわけですから、取得により株価が維持できることと、一株当たりの利益が向上するなどの株主還元が直接的に行われますが、大きな目的はROE向上ではないかと考えられます。

皆さんもご存じの通り、今、企業全体でROE重視の傾向が強まっています。企業に「ROE 8%以上」という目標を定めた「伊藤レポート」が公表されたことや、大手助言会社ISS( Institutional Shareholder Services)による「過去5期平均のROEは5%を下回ると、社長の再任に反対する」という方針、そして新しいインデックス「JPX日経400」が出現しました。

年金や日銀などはこのインデックスに登録されている銘柄の株式を購入する傾向が強いとされていますが、そのためには高ROEが条件とされており、それらのことが相まって、企業はこぞってROEを高めようとしているのです。

また、特にヤマダ電機は外国人の持株比率が43.1%(平成25年3月時点)と高い傾向がありますので、余計に株主からの圧力がかかりやすいのではないでしょうか。

ヤマダ電機のROEは1.8%と非常に低い水準です。この水準は投資家には受け入れられにくい状況となっています。

そこでどうするか。ROEを高めるためには、いくつかの方法があります。ROEは「純利益÷自己資本」で計算されます。王道は純利益を稼ぐことですが、短期的に上げるには、自己株買いが有効です。自己資本の中核をなす株主資本がその分、減少するからです。そういった点を考えて、ヤマダ電機は積極的に自己株買いを行っているのではないでしょうか。

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