「縛られない働き方に憧れる」会社勤めの彼の盲点 キャリアを歩むうえで、一貫性があるかどうか

✎ 1〜 ✎ 315 ✎ 316 ✎ 317 ✎ 最新
拡大
縮小

複数の選択肢を有していることはもちろん非常に大切なのですが、その選択肢はどこから提供されているか、も同時に考えたほうがよいでしょう。

頂戴した相談に書かれていた事例は、NTさんの努力やスキルによって提供される選択肢ではなく、外部環境によって提供される選択肢です。

つまり、先ほど述べたような外部環境の重なりがあって、「たまたま」現在あるチャンスなのです。そしてこれも「たまたま」そういった選択肢が複数あるように見えている状況なのです。

努力で勝ち取った選択肢ではない

重要なのは、「NTさんの努力やスキルによって提供された選択肢ではない」という点です。それらの選択肢は、自ら勝ち取ったものではなく、外部環境により「与えられた」選択肢です。

そのように考えると、「自由」や「自分自身の裁量」を重視したいNTさんの考えとは、そぐわないのではないでしょうか。

自分自身の人生やキャリアを、自分自身の自由裁量によってできる限りコントロールしたい、という要望があるにもかかわらず、選択肢が外部環境次第では矛盾が生じてしまいます。

繰り返しですが、そういった生き方や選択肢を否定するわけではありません。そうではないのですが、NTさんが目指そうと思っている方向性とは異なるのではないか、というように見受けられます。

仮にNTさんの状況が現在とは異なり、例えば「料理人としてやっています。ニセコや熊本、海外のようなチャンスがあり、好景気な場所に移動しようと思います」ならば話は別です。

その場合は料理という一貫した軸があり、場所を変えるだけだからです。場所を変えるだけですから、一貫性も担保できますし、むしろ幅が広がる可能性すらあるわけです。

しかしながら、現在のNTさんの状況を考えると、「現在お持ちのスキルや経験と関係ないけれども、好景気そうなところに行ってみる」という状態であり、そこには一貫性はないように思われます。

人生やキャリアにおいては、過去をいったん否定してみることも、もちろん大切なのですが、現在の裏返しが幸せとは限りません。

自分は何をしたいのか、どんな人生を歩みたいのか、などをもっと深く考えたほうがよいでしょう。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT