ホンダ「ステップワゴン」大胆変身に託す真意 かつての絶対王者は「3番手」から脱せるか

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最大の特徴ともいえる、わくわくゲートの着眼点は素晴らしい。アイデアを本当に実現するのは簡単ではなかっただろうし、開発関係者もデザインはすんなり決まったものの、実用化には相当に苦労したことを語っている。

一方、この機構は理にかなっている。まず、左右非対称のデザインは見た目にアンバランスな印象があるものの、運転時にはちゃんとルームミラーで真後ろが見える。開発担当者に言わせると「後方83mを走るオートバイが隠れない」。83mというのは、時速100kmで3秒かかる距離。つまり、自分の車よりも時速100km速く移動するバイクをそれだけ早めに発見できる余裕につながる。

「ギャンブル」との社内批判も

リアゲートから3列目シートに乗り降りできる

さらには、大人用の自転車が載せられる。通常のテールゲートと同じく上にも開けられるので、荷物の出し入れも従来にないさまざまなシーンに対応する。3列目シートも、跳ね上げ式でなく床下に格納できるタイプとしたのは従来型と同じだが、左右で分割してアレンジできるようになったことも、利便性を大きく向上させている。

ホンダ上層部には、これらについて「ギャンブルなことをやりやがって」という意見もある。それでも新型ステップワゴンを開発した担当者たちはそうは思っていない。この便利さが、いつか社内で否定的な意見も持つ人にも理解してもらえると信じているという。お客の反響も上々で、買ってみて良さを実感したという声がかなり届いているそうだ。

走りはどうか。エンジンはホンダ初の直噴ターボ。吸気ポート内で燃料を噴射し、空気とガソリンの混合気をシリンダー内に吸い込むのが、ガソリンエンジンの基本的な仕組みながら、直噴はまず空気だけを吸い込み、圧縮した空気にガソリンを直接噴射して燃焼させる。それに排気ガスを再利用して出力と燃費を高めるターボが組み合わせられる。この機構は高出力と省燃費を両立するために、もともとは欧州の自動車メーカーが熱心に取り組んできた経緯がある。

実際に運転するまでは直噴とターボの組み合わせは低速域でのレスポンスに影響があるかと思ったものの、走ってみると排気量1500ccの直噴ターボエンジンとCVTの組み合わせによる動力性能は十分で、余裕を感じるほどだった。同じく直噴ターボ+CVTのトヨタ「オーリス」でも感じたのだが、このコンビはなかなか相性がいい。

5代目ステップワゴンは企画当初、排気量2000ccの自然吸気ガソリンエンジンを積む予定だった。ところが開発を進める中で、1500ccの直噴ターボエンジンの実用化にメドがついた。そこで、これを採用するかどうか判断を迫られた。もともと予定になかったエンジンを搭載することで開発現場が苦労するのは目に見えていたものの、新型車の商品内容に少しでもインパクトを与えるために、採用が決まったようだ。

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