15年かけ「四国お遍路」やり遂げた人が語るリアル いろいろかかるが「宿と食事は節約可能」

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運転席に乗り込むこともできる(写真:筆者撮影)

なお、西条市は「うちぬき」という湧き水に恵まれた水の都でもある。中心部を水路が巡り、澄み切った水の流れを見ながら散策するのが楽しい。そこここに湧き水スポットがあり、港には海中から清水が湧き出る摩訶不思議な「弘法水」まで。西条市は本当に美しい街で、何度も訪れた。お遍路で四国を回ってこその発見だろう。

地方移住の下見にもなるお遍路

お遍路では徳島から高知、愛媛、香川と四国をぐるり一周する。何度も通ううちに、その土地の買い物事情や物価、公共交通機関の状況なども頭に入る。観光地を巡るだけでは見えてこない、生活者目線が備わってくる。以前は四国と聞いても徳島の阿波踊りや高知の桂浜、松山の道後温泉くらいの知識しかなかったが、回るうちに先に書いた西条市や、生活航路としてのフェリーが現役の高松市のファンになった。

わが足で歩き、わが目で見て知れることは多い。いつか二拠点生活をと考えたとき、愛媛や香川は筆者の中で候補の上位に来るだろう。これもお遍路をしたからこそだ。こうした札所巡り・霊場巡りは四国だけではない。お遍路で見知らぬ土地を回る体験は、地方移住の下見にちょうどいいのではないか。

筆者は生活者の消費をテーマにしているが、生活基盤が東京にあると、つい首都圏を基準に発信をしてしまいがちだ。しかし、四国に入るとコンビニの数もスーパー・ドラッグストアのチェーンも全部違う。大都市バイアスが自然に外れて、視界を広げてくれたとも思う。

コストと成果を勘定すると書いたものの、コストは計算しやすいが、成果を数値化するのは難しい。結願した今改めて思うのは、88という途方もない数でも、一つひとつ重ねていけば必ず終わるということだ。どんな苦しいことがあっても、前に進んでいけばかならず終わる。そうだと思えたことが一番の成果かもしれない。

最後に、「いつか時間ができたら……」という人に一言。たとえマイクロバスで回ったとしても、それは駐車場まで。本堂につくまでさらに険しい坂を上ったり、先が見えないほどの急な石段がそびえる札所も多い。寺社参りのご利益ゆえに長生きできるのではなく、寺社参りできるほどの脚力体力があるから長生きもできるというもの。いつかと思うなら、一日でも早く始めることをお勧めしたい。

(写真はすべて巡礼当時のもの)

 

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松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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