半チャンラーメンが「消滅」していく"切ない理由" 町中華メニューが以前より簡単に提供できぬ背景

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半チャーハンは「半」とは思えないサイズ。他店とは違い大きなお皿に盛られるため、半チャンラーメンを注文した客は隣の席に迷惑がかかるぐらいのサイズ感だった。

店主の中華鍋のカンカンカンという音のボリュームがすさまじく、ラーメンを啜りながら何度もビクッとしたことがある。

パラパラではなくモチッとした米の食感が印象的なチャーハン。強火で炒めて表面を香ばしく焼き上げており、ところどころ焦げが出ているのがうれしい。これぞ町中華のチャーハンだ。

(筆者撮影)

閉店のニュースを聞いて、多くの常連やファンたちがお店を訪れた。「たいよう軒」に行列ができているのを久しぶりに見た気がする。

高齢の店主さんと女将さんで切り盛りされており、女将さんは何度も腰が痛そうにしていた。体力的にも限界が来たのだろう。

厨房に閉店を告げる小さな紙が貼られていた。

お知らせ
長い間ご利用いただきましたが、この度一月二十六日をもちまして、閉店させて戴きます。
長年のご愛顧に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
たいよう軒

半チャンラーメンが衰退する3つの理由

2017年11月に、筆者は「半チャンラーメンが静かに衰退している理由」という記事を配信した。冒頭で触れた、同じく「神保町半チャンラーメン四天王」の一角だった「さぶちゃん」閉店時に書いたもので、半チャンラーメンが静かに衰退する理由を①価格の問題、②現在の健康志向に合わないこと、③つくる作業に手間がかかることと分析していた。

ラーメン店や中華店には、つねに「1000円の壁」という課題がある。1000円を超えると、いくら美味しくても食べ手が高いと感じてしまう傾向があり、値段を上げにくいなかで、庶民の味方である「半チャンラーメン」を1000円以上にするのはまずニーズに合わない。「厨房で鍋を振るう」という工程が1つ加わると、作る側にとっては想像以上に大変になるし、そして、そもそも現在の健康志向には合わない……。このような分析のうえで、さらに、当該記事では「今後はチェーン店の独擅場になるだろう」と予想した。

しかし、それから6年以上が経過し、事態は想像以上になっている。

次ページラーメン「1000円の壁」問題が想像以上に進展
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