「ぎょうざの満洲」小規模なのに根強い人気のワケ 餃子の特徴は「毎日でも食べられる家庭的な味」

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「味が変わったことで、お客様から苦情が来るのでは、と心配していましたが、ありがたいことにまったくそんなことはなく、かえって評価が高まりました。餃子の製造数も以前と比較して増加。これは1人当たりの食べる量が増えたのが理由と思われます」(池野谷社長)

「満洲ファーム」が保有するキャベツ畑(撮影:風間仁一郎)

また同社では、提携農家から仕入れた国産素材を使用しているほか、自社農園で収穫したキャベツを取り入れている。農業の6次産業化を進めている埼玉県から打診があり、10年ほど前から始めたのだそう。

農業の6次産業化とは何か。「1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組」(農水省HP「6次産業化とは」より)とのことだ。

生産から販売までを一体的に行うことで、可能性を広げ価値を高めようということらしい。6はどこから出てきたのかというと、「1×2×3=6」だから。つまり生産物の価値がかけ算で高まるということだろう。

畑での経験をメニュー開発に役立てる

2014年に自社農園である「満洲ファーム」を設立。農園をとりまとめているのは取締副社長であり夫の池野谷高志氏。高志氏の実家が兼業農家で農業の経験や知識を有していたことも、スムーズに自社農園を始められた理由だろう。

季節によりキャベツが収穫できない時期もあるので、提携農家のものも使用しているが、自社農園だけでかなりのところをまかなっている。また池野谷宅の畑(会社の農園ではなく)でも野菜を育てており、その経験がメニュー開発に役立っているそうだ。

「野菜を作ると旬による味の違いに気づくようになります。例えば今は大根がみずみずしくておいしい。だから店で出している付け合わせは大根の漬け物。期間限定メニューもこんなふうに決まることが多いです。普通のマーボー豆腐より辛い『辛マーボー豆腐』も、うちで山椒の実が穫れたことから思いつきました」(池野谷社長)

なお11月の期間限定メニューは「地産地消」がテーマで、ふわたまエリンギ丼。これは社員の公募で決まったものだそうだ。

川越的場店でとくに人気があるメニューがレバニラ炒め(530円)。ここと坂戸にっさい店の2店舗限定で、地元企業サイボクのブランド豚、ゴールデンポークを使用している。ほかの店舗では鹿児島県・宮崎県産のレバーを使用。素材の良さが引き立つよう、あっさりと味つけされているのに、まったく生臭みがないのは新鮮さゆえだという(撮影:風間仁一郎)

このように旬の素材を生かしたヘルシーなメニュー、毎日食べられる飽きのこない味が、満洲の最大の魅力なのだろう。客層は幼児から年配の方まで幅広く、男女比率は半々と、中華ジャンルにしては女性が高め。多くのメニューは白米か玄米かで選べるが、意外にも、40〜50代男性に玄米派が多いという。池野谷社長によれば「その分大盛を頼む人も多い」そうだ。

池野谷社長のコメントにもあったように、社員は毎日、社食で自社の餃子やラーメンを食べている。自然と味について考える機会が多くなり、ブラッシュアップも絶えず行っているという。

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