イケアにあって、日本企業にはない経営哲学 CSR成功のカギはトップダウンにあり

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続いて、先ほども紹介したイケア(本社オランダ)。世界最大の家具販売店である同社は、欧州・北米・アジア・オセアニアなど世界27カ国に約300店舗を持つ。従業員はグループ全体で42カ国約14万7000人にもなる。「ピープル&プラネット・ポジティブ」を立ち上げ、自社のCSR・サステナビリティをトップダウンで推進する先進企業である。

イケアは2011年1月に気候変動対策の国際NGO「クライメイト・グループ」のCEO・創立者スティーブ・ハワード氏をCSO(最高サステナビリティ責任者)に招聘した。

ハワード氏は「世界では2030年までに貧困層から30億人が抜け出し、中産階級は50億人に膨れ上がる。資源が枯渇し始めている世界にとって、これは大きな試練」「地球温暖化の影響で気温が6度上昇すると予測されているが、近年の不可解な気象現象の多くはたった1度の気温上昇で起こっている。この危機を乗り越えるために人口が増加する中で企業の力などで二酸化炭素の排出を2010年代終わりまでをピークとして、その後、減少に向かわせなければならない」という。

サステナビリティは「やらなければならない」

世界の中間層の増大でさらに増加が予想される二酸化炭素排出を企業の積極的な取り組みで減らしていくことを狙う。また、「サステナビリティは『やった方がよい』の段階から『やらなければならない』段階に入っている。今ここで取り組むだけでなく人類が存続する限り継続しなければならない」と企業がCSR・サステナビリティに取り組むことの必然性を訴える。

同氏は、これら大きなリスクについて、2012年10月に2020年をターゲットとした同社のCSR・サステナビリティ戦略である「ピープル&プラネット・ポジティブ」を立ち上げ、大きな課題解決に貢献する取り組みをコミットメントして活動を進めている。

最後にマークス&スペンサー(M&S)。同社はCSR戦略である「プランA」を2007年に発表、トップダウンでCSR・サステナビリティを実施している先進企業だ。

M&SプランA部長のマイク・バリー氏は、CSR戦略であるプランAを取締役会に10のポイントをベースにビジネスケースとして提案し、企業戦略としての実施を可能にした。

同氏は「プランAの導入から3~4年は、推進するのが非常に難しかった」と振り返る。「コスト削減とベネフィットとして金額に換算することで、社内の財務チームと情報を共有し、ビジネスケースとして形あるものを最初に見せた。そうすることで、各自がプランAの推進に自信を持った。形のないもののディスカッションは難しい。まずはCSRをビジネスの結果として見せることが必要」(同氏)と社内にCSRを推進していくための「見える化」構築の重要性を語る。

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