イケアにあって、日本企業にはない経営哲学 CSR成功のカギはトップダウンにあり

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さらにそれぞれのリーダーシップも重視。「M&Sの取締役・経営幹部などトップ130のリーダーたちには、プランAのターゲットのそれぞれに責任が割り当てられている。これらのサステナビリティに関する課題はビジネスケースとして、各自がフォローアップしなければならず、リーダー個人の業績評価と収入に結びつく。リーダーたちは自ら計画を作成して管理しなければならない。こうした戦略的なリーダーシップが目標を達成するために必要」ともいう。M&Sにおける「プランA」は変革の実現を可能にし、同社のイノベーションの醸成にもつながっているのだ。

このようにCSR・サステナビリティを推進するには、企業トップ・取締役の役割が非常に重要で、トップダウンのアプローチなしには成し得ることは難しい。成功するためにはいかに幹部を取り込むかにかかっている。

ガバナンスが重要

ただ、その際に、注意が必要なのがガバナンスだ。CSRに関する情報は、通常さまざまなセクションから報告されるので、取締役が全体像をつかむことが難しい。

組織内のスムーズな伝達、情報収集をするためにCSR面を考慮したガバナンスが重要となってくる。CSRガバナンスの体制を構築し定期的に改善していくことで、企業トップや取締役がCSRの課題と機会を効果的に管理・活用できるようになる。

CSR担当部門は経営層にこうした重要性を理解してもらう勉強の機会を設け、CSR推進のためのコーポレートガバナンスの構築の重要性を訴えることでコミットメントを得ていく必要があるだろう。

さらに、以前ご紹介したサステナブル・ストーリーテリングの手法「社内でCSRの変革を起こすストーリー」を活用し、企業トップ・取締役・経営層の理解と共感を呼び、トップダウンで実施するコミットメントを得るためのきっかけにすることが効果的だ。

その上で、以下の取り組みを行っていくとよいだろう。

  1. ① 自社のミッションや企業価値・方針にCSRを組み込む
  2. ② 主要な意思決定にCSRを反映させる
  3. ③ 企業トップ・取締役・シニアマネジメントの業績評価にCSRを組み込む
  4. ④ 従業員へのCSRの浸透教育・研修を実施しCSRについての社内での理解・認識を合わせる
  5. ⑤ ステークホルダーとのコミュニケーション・情報開示方法を再検討する

この結果、企業にCSR・サステナビリティが統合していく次のステージへステップアップが可能となる。今回ご紹介した方法や企業を参考にトップダウンでCSR・サステナビリティの推進ができる仕組みを構築していただきたい。

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下田屋 毅 サステイナビジョン代表取締役

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しもたや たけし

 下田屋 毅 しもたや たけし Sustainavision Ltd. (サステイナビジョン)代表取締役

英国ロンドン在住CSRコンサルタント。日本と欧州とのCSRの懸け橋となるべくSustainavision Ltd.を2010年英国に設立。ロンドンに拠点を置き、CSRコンサルティング、CSR研修、CSR関連リサーチを実施。
1991年大手重工メーカー入社。労働安全衛生主担当として、「安全衛生管理要綱」作成、「安全内部監査制度」を企画・導入を実施。他に事業部PR・広報宣伝強化のプロジェクトマネジャーなども担当。環境ビジネスの新規事業会社立ち上げ後2007年に渡英。英国イースト・アングリア大学環境科学修士、英国ランカスター大学MBA(経営学修士)修了。ビジネス・ブレークスルー大学非常勤教員(担当:CSR)、国際交流基金ロンドンCSRセミナーシリーズ2011/2012プロジェクトアドバイザー。
サステイナビジョン・ウェブサイト: http://www.sustainavisionltd.com/

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