ストーリーで共感呼ぶ、ユニリーバのCSR すべてのステークホルダーの意識を変えよ

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 世界でCSRの重要性がさらに高まっている。特にEU(欧州連合)ではCSRに関する重要政策が打ち出されるなど、新しい動きが加速し始めている。だが、日本ではまだ、ごく単純に「CSR=社会貢献」だと認識している向きがまだ多い。
では、世界のCSRの変化にどのように付き合うべきか。ロンドン在住のCSRコンサルタント・下田屋毅氏が、欧州の最新情報を交え、レポートする。
ユニリーバのポール・ポルマンCEO。同社もストーリーテリングの手法を取り入れ、CSRで成功している1社だ(AP/アフロ)

前回のコラムでは、CSRを実施しないことによるリスクについて、また、気候変動、エネルギー・燃料など10の「メガリスク」がビジネスチャンスになるという話をした。メガリスクを、人類を待ち受ける大きなリスクとして捉えるのみでなく、ビジネスの機会と捉えれば、自社製品・サービスのイノベーションに結びつけることができる。

その第一歩は、企業のCSRやサステナビリティに関係する活動を、市場の拡大、学習、コスト削減、ビジネスのチャンスとして見出すことだ。その次には、それを社内外で浸透・推進し、消費者、コミュニティなどのステークホルダーへうまく伝えることが求められるが、それにはどうすればよいだろうか。

今回は、欧米で有効なツールとして注目され始めている「サステナブル・ストーリーテリング」という手法をご紹介しよう。

「行動したい衝動」に結びつく「ストーリーテリング」

「ストーリーテリング」とは、伝えたい思いや概念を、イメージしやすい印象的な体験談やエピソードといった「ストーリー」(物語)として、聞き手に強く印象づける手法である。2000年頃から欧米で「聴き手に伝える方法として非常に効果的」と注目されていた。

それまでビジネスの場面でのプレゼンテーションでは、情報や数字などを伝えることに主眼が置かれてきた。ただ、これらは理論的ではあるものの、聴き手が取り組みたいと思うようにはなりにくかった。

ところが、ストーリーテリングならば物語性があることで、話を聞いた人の記憶に残りやすい。米誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』などでも紹介され、「聴き手自身が行動したいという衝動に結びつきやすい」と、高く評価されている。

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