アキュセラ創業者の助っ人はあの北尾氏 狙われたバイオベンチャー、奪還の顛末

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創業者で開発者の窪田良CEOは「コアの価値観の共有がいちばん大切だと再認識した」と語る(撮影:梅谷秀司)

「アキュセラも狙われる会社になってきた」。窪田良アキュセラCEOにジョークを飛ばす余裕が戻った。

アキュセラ(東京証券取引所マザーズ外国部上場)の創業者であり、メインの医薬品候補物質「エミクススタト塩酸塩」の開発者である窪田博士は、今年1月に取締役会の対立から、いったんCEOの座を追われた。だが、5月1日、経営権を奪還してCEOに返り咲くことができた。20日には新経営体制の発足と経営方針、開発方針を発表している。

自ら採用した人物に突如、反乱を起こされて

アキュセラは、視力を脅かす眼疾患を治療または進行を遅らせる可能性のある治療薬の開発に取り組んでいるバイオベンチャー。そもそも、慶應大学医学部出身の眼科医である窪田博士自身が開発したエミクススタト塩酸塩を、加齢黄斑変性ドライ型の治療薬(飲み薬)として世に出すためにアメリカで設立した会社だ。2014年2月に日本で株式を上場し、1.4億ドル(150億円超)を調達した。

だが、当の医薬品候補物質は、まだ米国で臨床2b/3相の途上(大塚製薬と共同開発)にある。開発の大詰めはこれからだ。にもかかわらず、開発者を追い出す経営の乗っ取り事件が勃発したのはなぜなのか。日本的な感覚では非常に違和感がある。

ことの顛末はこうだ。始まりは、窪田博士が2013年、ブライアン・オカラガン氏を取締役として採用したこと。研究者肌の窪田博士は、かねてから上場企業の責任として「プロの経営者」を経営メンバーに加えたいと考えていた。MBAを持ち、ノバルティスのゼネラルマネジャーや複数のバイオベンチャーでCEOを努めた経歴を持つオカラガン氏は、窪田氏の想定していた人物像にぴたりと合致したという。しかし、そのオカラガン氏をCOO、社長に取り立てた2014年9月以降風向きが変わり始める。

2014年12月の取締役会で、突然、窪田博士はCEO退任を迫られ、代表権はあるものの会長兼ファウンダーへの棚上げを通告された。社外取締役4名は、創業初期から窪田博士を支援してきた人物で、そのときまでは「医薬品のスティーブ・ジョブズになれ」などと励ましていたという。ところが突然、「経営は経営のプロに任せるべき」と態度を変えた。窪田博士は、なぜ取締役会が豹変したのかわからないままに、いったんは取締役会の決定を受け入れた。 

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